給付奨学金は「返さなくてよい奨学金」です。それなのにJASSOから、「給付奨学金の返還が必要」「返還誓約書を提出してください」という案内が届くことがあります。

この案内を見れば、「給付なのに、なぜ返すの?」「成績が少し悪いだけでも取り消されるの?」と不安になるのは当然です。

調べてみると、給付奨学金には毎年の適格認定があり、結果は継続・警告・停止・廃止に分かれます。ただし、支給が廃止されることと、すでに受け取ったお金まで返すことは同じではありません。

結論からいうと、少し成績が下がっただけで、すぐに受給済みの給付奨学金を全額返すわけではありません。

  • 普通の成績低下は、まず警告・停止・今後の支給廃止が中心
  • 過去分の返還は、学修実態がほぼない場合や重い懲戒処分など
  • 病気・災害など、やむを得ない事情は判定で考慮される
  • 自主退学でも、退学後に振り込まれた分は返金が必要

「取り消し」と「返還」は別に考える

給付奨学金については、似た言葉がいくつも登場します。まず、次の2つを分けて考えると理解しやすくなります。

今後の支給が止まる

警告、停止、廃止などの判定により、これから先の振込みが中断または終了します。

受給済みの分を返す

特に厳しい学業不振や重い懲戒処分などで、過去に受け取った分まで返還します。

JASSOの処置通知には、同じ「廃止」でも「廃止(返還が必要)」と「廃止(返還不要)」があります。「廃止」という文字だけを見て、受給済みの全額を必ず返すと決めつけないことが大切です。

給付奨学金の「継続・警告・停止・廃止」

学校は学年末に学業成績などを確認し、JASSOへ判定結果を報告します。2年制以下の課程や高等専門学校では、原則として学年の半期ごとです。

区分主な基準どうなる?
継続警告・停止・廃止に該当しない支給が続く
警告修得単位が標準の7割以下、GPA等が下位4分の1、出席率8割以下など支給は継続。次回も警告となると原則として廃止
停止2回連続で警告となり、2回目の理由が「GPA等が下位4分の1」のみの場合(3回連続警告を除く)支給を中断。次の認定で警告・廃止に該当しなければ、次の学年等から再開
廃止卒業延期の確定、修得単位が標準の6割以下、出席率6割以下、停止基準を除く連続警告など給付奨学生の資格を失い、今後の支給が終了

※上記はJASSOの2026年度基準を要約しています。標準単位数やGPAの判定方法、やむを得ない事情の確認は学校を通じて行われます。

「警告」だけなら振込みは継続します。
1科目を不合格になったことや、GPAが前回より下がったことだけで、直ちに受給済み分の返還が決まるわけではありません。修得単位数の合計と標準単位数の割合、GPA等が学部等の下位4分の1に入るか、出席状況などで判定されます。処置通知を放置せず、学校の奨学金窓口へ改善方法を相談しましょう。

受給済みの給付奨学金まで返すのはどんなとき?

ケース1:学修実態がほとんど認められない

学業成績が著しく不良で、災害・傷病などのやむを得ない事情がない場合は、学年の初日に遡って給付奨学金の返還を求められることがあります。

返還判定の目安
  • 修得単位数の累計が標準単位数の1割以下
  • 出席率が1割以下など、学修意欲があると認められない

これは「少し成績が悪い」という水準ではなく、授業や学修の実態がほぼ確認できない状態です。

ケース2:重い懲戒処分を受けた

懲戒による退学・除籍・無期停学・3か月以上の停学となった場合は、認定が取り消され、処分を受けた学年の初日まで遡って支給済み分の返還を求められます。

3か月未満の停学や訓告処分では、処分期間中の支給停止が基本です。処分終了後、学校からの報告により支給が再開されます。

ケース3:資格がなくなった後も振り込まれた

退学などで奨学生の資格を失った後や、休学などで支給停止となる期間に振込みが続いた場合は、その余分に受け取った分を返金する必要があります。

自主退学すると全額返還になる?

自主退学しただけで、在学中に適正に受け取った給付奨学金を必ず全額返すわけではありません。

ただし、退学時には支給終了時の適格認定が行われ、学修状況によって返還の要否が判定されます。退学自体と、在学中に適正に受給した給付奨学金の返還は同じ問題ではありません。一方、退学後に振り込まれた分は、過去分の返還とは別に、余分な振込みの「返金」として速やかな手続きが必要です。

  1. 退学を決めたら、まず学校の奨学金担当窓口へ連絡する
  2. 学校から「異動願(届)」を受け取り、期限内に提出する
  3. スカラネット・パーソナルで振込みと処置通知を確認する
  4. 退学後に振り込まれた場合は、学校の指示で返金する

「どうせ辞めるから」と手続きを後回しにすると、余分な振込みが発生し、返金手続きが増えます。退学日が決まる前の段階でも、早めに学校へ相談するのが安全です。

貸与奨学金も利用していたら、返還はいつから?

ここは給付奨学金と扱いが大きく異なります。第一種・第二種などの貸与奨学金は、退学までに借りた金額を返還します。1年で退学した場合も、その1年間に借りた分が返還対象です。

給付奨学金

自主退学だけで受給済みの全額を必ず返すわけではありません。退学時の学修状況などで判定されます。

貸与奨学金

退学すると貸与が終了し、それまでに借りた金額の返還が始まります。

返還開始は、貸与終了月の翌月から数えて7か月目が原則です。
たとえば3月で貸与が終了した場合は、原則として10月27日が初回の振替日です。

給付型と貸与型を併用している場合は、給付分が返還不要でも、貸与分の返還は別に始まります。退学後の生活費や収入だけでなく、毎月の返還額まで含めて考える必要があります。

退学を決める前に確認したいこと

  • 現在までの貸与総額
  • 退学後の毎月の返還予定額
  • 返還開始までの7か月間に、収入の見通しを立てられるか
  • 休学・転学・別の学校への進学という選択肢がないか
  • 返還が難しい場合に、在学猶予や返還期限猶予を利用できるか

返還開始だけを理由に、心身の不調を抱えたまま無理に通学を続ける必要はありません。ただし、退学届を出してから返還額を知るのでは遅いため、学校の奨学金担当窓口で返還予定を確認してから判断するのが安心です。貸与額や金利の決まり方は、奨学金の利率はいつ決まる?でも解説しています。

親の収入が増えたら、過去分も返す?

給付奨学金は、毎年、本人と生計維持者の住民税情報などをもとに家計の適格認定が行われます。収入などが変わると、10月以降の支援区分が変わったり、支給が止まったりすることがあります。

通常の年次見直しで支援区分が変わることと、学業不振による過去分の返還は別です。ただし、住民税情報に税の更正があった場合は、JASSOへの申告により家計基準が再判定されることがあります。再判定の結果、採用取消しや給付額の変更が遡って決まり、既支給額に超過があれば返還・返金が必要になる可能性があります。

ここを混同しない

  • 家計基準:主に今後の支援区分・支給額を見直す
  • 学業基準:警告・停止・廃止を判定する
  • 懲戒処分:内容によって取消し・停止・返還となる

「返還誓約書」が届いたらどうする?

返還が必要と決まった場合、JASSOから本人へ、返還金額や返還方法を記載した「返還開始の通知」と「返還誓約書」が送付されます。

  1. 学校から交付された「処置通知」の区分を確認する
  2. JASSOの返還開始通知で、対象期間と返還額を確認する
  3. 返還誓約書へ必要事項を記入し、期限までに提出する
  4. 口座振替(リレー口座)の加入手続きをする
  5. 返還が難しい場合は、減額返還や返還期限猶予を相談する

2026年9月1日には、返還対象者へJASSOからSMSが送信され、返還誓約書の提出期限が9月25日必着と案内されました。これは給付奨学生全員への連絡ではなく、すでに返還対象となった人への手続き案内です。発信元は、docomo・au・楽天モバイルでは「0570666301」、SoftBankでは「0032069000」と案内されています。

SMSだけで判断しないでください。
郵送された通知、学校からの処置通知、スカラネット・パーソナルを確認しましょう。不審なURLへ個人情報を入力せず、判断できない場合はJASSO奨学金相談センターへ問い合わせてください。

まとめ|普通の成績低下と「返還が必要」は違う

この記事のまとめ

  • 給付奨学金は原則として返済不要
  • 毎年の適格認定で、継続・警告・停止・廃止に分かれる
  • 連続警告は原則廃止で、停止は2回目の理由がGPA基準のみの場合の限定例外
  • 廃止になっても、過去分の返還が不要な場合がある
  • 単位・出席が1割以下など学修実態がほぼなく、やむを得ない事情もない場合は返還の可能性
  • 重い懲戒処分では、学年初日まで遡って返還
  • 自主退学後に振り込まれた分は返金が必要
  • 貸与奨学金は、貸与終了月の翌月から数えて7か月目に返還開始
  • 病気・災害などの事情がある場合は、早めに学校へ相談する

給付奨学金の返還は、普通に通学していて少し成績が下がった人へ、突然一律に請求される仕組みではありません。

一方で、在籍報告や退学・休学の届出を放置すると、余分な振込みや処置の遅れにつながります。本人だけに任せきりにせず、保護者も「処置通知が来ていないか」「学校へ相談できているか」を一緒に確認しておくと安心です。

よくある質問

Q. 成績が少し下がると、すぐ返還ですか?

いいえ。まず警告・停止・廃止などの段階があります。過去分の返還は、学修実態がほぼなく、やむを得ない事情もない場合などです。

Q. 自主退学すると全額返還ですか?

自主退学だけで必ず全額返還になるわけではありません。ただし、退学後に振り込まれた分は返金が必要で、退学時の学修状況によっては過去分の返還を求められる場合があります。

Q. 1年で退学したら、貸与奨学金の返還はいつ始まりますか?

貸与終了月の翌月から数えて7か月目に始まります。3月で貸与が終了した場合は、原則として10月27日が初回の振替日です。退学までに借りた金額は返還対象になります。

Q. 病気で出席できなかった場合も返還ですか?

災害・傷病その他のやむを得ない事情は判定で考慮されます。診断書などが必要になる場合があるため、事情が生じた段階で学校の奨学金担当窓口へ相談してください。

Q. 返還誓約書は全員が出しますか?

いいえ。今回説明した給付奨学金の返還誓約書は、JASSOから返還が必要と判定された人へ送付されます。

参考情報

※本記事は2026年9月2日時点のJASSO公表情報をもとに作成しています。実際の認定区分、返還対象期間、必要書類は個別の事情によって異なります。処置通知を受け取った場合は、在学校の奨学金担当窓口とJASSOへ確認してください。