ふるさと納税が「自治体全体で赤字」って本当?863億円マイナスの理由と手数料規制の行方をやさしく解説【2026年6月】
「ふるさと納税、2024年度決算では自治体全体で赤字」——2026年6月12日、こんなニュースが流れました(共同通信)。寄付総額は過去最高を更新し続けているのに、なぜ「赤字」なのでしょうか。
結論から言うと、集めた寄付の半分近くが返礼品の調達費や仲介サイトの手数料といった「経費」として消えていて、住民税の控除(減収)まで含めると、自治体全体では収支がマイナスになっている、という話です。会計検査院の調べで、2024年度はそのマイナスが863億円にのぼることが明らかになりました。
そして「業者の手数料に規制が入り始めたのはこのせい?」という疑問——方向性はその通りです。実は今回の検査院の報告より一足先に、総務省は2026年5月、仲介サイト事業者への手数料引き下げ要請に動いていました。この記事では、お金の流れと規制の動き、そして私たち利用者への影響を、出典つきで整理します。
1. ニュースの中身:何が「赤字」なのか
今回のニュースの元になったのは、会計検査院(国のお金の使われ方をチェックする機関)の調査です。報道によると、ポイントは次の3つです。
- 2024年度決算で、ふるさと納税が自治体全体の収支に与えた影響は863億円のマイナス
- 2024年度の寄付総額は過去最高の1兆2,728億円。それでも全体では赤字
- 検査院は「自治体全体でみると、歳入総額を減少させる方向」と分析
ここで大事なのは、「赤字」といってもあなたの控除が受けられなくなるという話ではないことです。寄付した人の「実質自己負担2,000円」の仕組みは、現時点で何も変わっていません。赤字になっているのは、制度を運営する自治体側の懐(ふところ)の話です。
2. お金の流れで見る:寄付1兆2,728億円はどこへ消える?
「過去最高の寄付が集まっているのに赤字」というナゾは、お金の流れを追うと解けます。
つまり、寄付額がいくら膨らんでも、その半分近くが返礼品業者や仲介サイトなど「自治体の外」に流れる構造になっているのです。集める側の自治体は潤っても、出ていく側(都市部)の減収と経費を合計すると、自治体全体ではマイナスになる——これが「赤字」の正体です。
経費として出ていくお金の一部は、返礼品を作る地方の生産者や事業者の売上になっています。「地方の産業支援」というふるさと納税本来の目的に沿ったお金の流れもあるため、賛否が分かれているのが実情です。
3. 赤字は今年だけ?——実は3年連続
報道によると、自治体全体の収支マイナスは2024年度が初めてではありません。
| 年度 | 自治体全体の収支への影響 | 寄付総額 |
|---|---|---|
| 2022年度 | ▲580億円 | 約9,654億円 |
| 2023年度 | ▲1,060億円 | 約1兆1,175億円 |
| 2024年度 | ▲863億円 | 1兆2,728億円(過去最高) |
※収支影響額は会計検査院調べ(共同通信報道)。寄付総額は総務省「ふるさと納税に関する現況調査」。
検査院は、2017年度以降「歳入より歳出が大きくなる傾向」が続いていると指摘しています。つまり構造的な問題であり、今回の報告で初めて「全体でいくら赤字か」が具体的な数字で示された、というのが正確なところです。
4. 手数料規制はもう始まっている【時系列】
「それで業者の手数料を制限しだしたの?」という疑問に答えるために、規制の動きを時系列で並べてみます。実は、手数料への規制の動きは今回の赤字報道より前に始まっていました。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年10月 | 経費ルール厳格化。「経費は寄付額の5割以下」の計算に含める範囲が広がる |
| 2025年10月 | 仲介サイトのポイント付与が禁止に(楽天ポイント還元などは2025年9月で終了) |
| 2026年5月12日 | 総務省が「2024年度の仲介サイトへの実質的な手数料は1,379億円=寄付額の11.5%」と公表 |
| 2026年5月22日 | 総務省が仲介サイト事業者に手数料の引き下げを要請。8月31日までに対応方針の回答を求める |
| 2026年6月12日 | 会計検査院の調査で「自治体全体で863億円の赤字」が判明(今回のニュース) |
| 〜2029年(計画) | 経費の上限を現在の「寄付額の5割」から段階的に「4割」へ引き下げる方針と報じられる |
順序としては「手数料規制の動き(5月)→ 赤字の数字が判明(6月)」なので、今回の報道がきっかけで規制が始まったわけではありません。ただし問題意識は同じで、「寄付の半分近くが経費に消えて自治体に残らない」構造への対策が、総務省と会計検査院の両方から進められている、という見方ができます。今回の検査院の指摘で、この流れがさらに後押しされる可能性はあるでしょう。
2026年5月の手数料引き下げは、法律で上限を定めたものではなく、総務省から事業者への「要請」(お願い)です。事業者がどう応じるかは8月末の回答待ち。一方、経費5割→4割の上限引き下げは制度のルール変更として段階的に進む計画と報じられています。
5. 私たち利用者への影響は?
40〜50代の利用者として気になるのは「で、自分はどうすればいいの?」だと思います。現時点で言えることを整理します。
変わらないこと
- 自己負担2,000円で返礼品がもらえる仕組みそのものは変わっていません。控除の計算方法も従来どおりです
- 制度を廃止するという話は、現時点で政府から出ていません
変わったこと・変わりそうなこと
- ポイント還元はすでに終了(2025年10月から禁止)。「どのサイトで寄付してもポイント分の差はない」時代になりました
- 経費上限が5割→4割に下がると、返礼品の量や質(いわゆる還元率)は今より渋くなる可能性があります。返礼品調達費はルール上「寄付額の3割以下」ですが、経費全体が圧縮される中で、送料込みの実質的なお得度に影響が出ることも考えられます
- 都市部の税流出や赤字構造への批判は続いており、今後も制度の見直し議論は続くと言われています
制度の構造に課題があるのは事実ですが、それは国と自治体が解決すべき問題で、利用者が遠慮する理由にはなりません。ルールの範囲内で使う分には誰にも後ろめたいことはない制度です。ただし「お得度」は年々少しずつ削られる方向なので、使うなら今年の枠は今年のうちに、控除上限を確認して計画的にが良いと考えます。
自分の控除上限額がまだあいまいな方は、年収と家族構成をタップするだけで目安がわかる控除上限額シミュレーターをどうぞ。仕組みのおさらいは解説記事、実際にどんな返礼品がコスパが良いかは毎年リピートしているおすすめ7選にまとめています。
6. まとめ
- 会計検査院の調べで、2024年度決算ではふるさと納税が自治体全体の収支に863億円のマイナスと判明(22年度▲580億円・23年度▲1,060億円に続く流れ)
- 原因は寄付額の半分近く(約5,901億円)が経費として自治体の外へ流れる構造。うち仲介サイトの手数料は1,379億円=寄付額の11.5%
- 総務省は赤字報道より先の2026年5月に手数料引き下げを要請済み(8月末回答期限)。経費上限も2029年までに5割→4割へ引き下げる計画と報道
- 利用者の自己負担2,000円の仕組みは変わらない。ただしポイント還元は終了済みで、返礼品のお得度は縮む方向
- 使うなら控除上限を確認して計画的に。制度見直しの議論は今後も続くと言われています
- 共同通信「ふるさと納税8百億円赤字 24年度決算、自治体全体で」2026年6月12日配信(Yahoo!ニュース掲載/秋田魁新報掲載)
- 日本経済新聞「ふるさと納税のぶれ、地方財政に誤算 24年度はマイナス影響863億円」
- 日本経済新聞「ふるさと納税11.5%が仲介手数料に 総務省、事業者に引き下げ要請へ」2026年5月
- ITmedia NEWS「総務省、ふるさと納税で仲介サイト事業者に手数料引き下げを要請 8月末までに回答求める」2026年5月25日
- NHK「『ふるさと納税サイト手数料引き下げを』事業者に要請 総務省」
- 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和7年度実施)」(寄付総額1兆2,728億円・住民税控除額8,710億円など)