「扶養控除って、結局いくら税金が安くなるの?」——子どもが高校生や大学生になると、一度は気になる疑問だと思います。私も50代になり、子どもの進学を前にして改めて調べ直しました。
結論から言うと、控除額がいちばん大きいのは大学生(19〜22歳)の63万円です。ところが「実際に家計が助かる金額」でみると、児童手当まで含めれば高校生(16〜18歳)世代のほうが大きくなるケースがある——これが2024年の児童手当拡充で生まれた、少し意外な逆転現象です。
この記事では、扶養に不安や疑問を感じている後輩タクヤ(45歳・会社員)との対話形式で、①扶養控除で実際いくら税金が減るのか、②年齢ごとのお得度、③「大学生じゃないと使えない」という誤解、を早見表と具体的な数字でやさしく解説します。
年収600万円だから必ず所得税率10%になる、というわけではありません。税率は年収ではなく課税所得で決まり、社会保険料や他の控除の状況によって変わります。この記事では分かりやすさを優先して、課税所得が195万〜330万円(所得税率10%区分)のケースで計算しています。ご自身の区分は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた金額で確認できます。
年齢別・お得度早見表
| 子の年齢 | 所得税の控除 | 住民税の控除 | 年間の減税額 | 児童手当 | 年間の家計効果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0〜15歳 | なし | なし | 0円 | 12万円 | +12.0万円 |
| 16〜18歳 | 38万円 | 33万円 | 約7.2万円 | 12万円 | +19.2万円 |
| 19〜22歳 | 63万円 | 45万円 | 約10.9万円 | なし | +10.9万円 |
| 23歳〜69歳 | 38万円 | 33万円 | 約7.2万円 | なし | +7.2万円 |
※表は左右にスクロールできます。減税額は所得税率10%区分での概算です。
この表の注記として、次の点をおさえておいてください。
先輩、うちの子が高校生になって「扶養控除38万円」って年末調整の紙に出てきました。これ、38万円が戻ってくるってことですか?
そこ、みんな勘違いしやすいところなんだ。結論から言うと、戻ってくるのは38万円ではなく、その一部だけだよ。扶養控除は「税金そのものを38万円まけてくれる」制度じゃなくて、「税金の計算のもとになる所得を38万円分減らしてくれる」制度なんだ。
所得を減らす……ということは、実際に安くなる税金はもっと少ない?
そのとおり。減る税金は「控除額 × 税率」で決まる。所得税率が10%の家庭なら、高校生(16〜18歳)の子1人で年に約7.2万円、大学生(19〜22歳)なら年に約10.9万円の減税だ。控除額の38万円や63万円が丸ごと戻るわけじゃない、というのが大事なポイントだよ。
まとめると、扶養控除の「お得な金額」は、控除額そのものではなく控除額に税率をかけた金額です。所得税(復興税込みで約10.21%)と住民税(一律10%)の両方が安くなるので、高校生の子1人なら「所得税で約3.9万円+住民税で約3.3万円=約7.2万円」という内訳になります。まずは「控除額=戻る金額ではない」ことを覚えておきましょう。
あれ、そういえば下の小学生の子は扶養控除がゼロなんですよね。上の子は控除があるのに、なんで小さい子はないんですか?
これは2010年度の税制改正で、15歳以下の「年少扶養控除(38万円)」が廃止されたからなんだ。「所得控除から手当へ」という方針で、税金を安くする形をやめて、代わりに現金(子ども手当=いまの児童手当)を配る形に切り替えたんだよ。
じゃあ、控除がなくなった代わりに手当をもらえている、ということですか。
そういうこと。だから0〜15歳は扶養控除ゼロでも、児童手当で年12万円(3歳未満は年18万円)を受け取れている。損しているわけではなく、「戻し方が現金に変わった」と考えるといいよ。
結論として、0〜15歳に扶養控除がないのは冷遇ではなく、税の割引から現金給付へと支援の形が切り替わった結果です。この「控除から手当へ」という流れを頭に入れておくと、次の高校生世代の「両取り」がなぜ起きているのかも理解しやすくなります。
早見表を見ると、控除だけなら大学生の10.9万円が一番大きいですよね。でも「家計効果」の列だと高校生が19.2万円で一番大きい。これはどういうことですか?
いい質問だね。まず正確に言うと、控除額だけで比べれば大学生(63万円)が最大で、ここは動かない。逆転が起きるのは「児童手当を合わせた家計全体の効果」で見たときだけ、という条件つきの話なんだ。
なるほど。高校生は減税7.2万円に加えて児童手当12万円ももらえるから、合計19.2万円になると。
そう。2024年10月に児童手当が高校生年代まで広がった結果、16〜18歳は「児童手当+扶養控除」の両取りになったんだ。一方で大学生は児童手当が出ないから、減税の10.9万円だけ。だから家計効果でみると高校生が上回る、というわけ。
整理すると、「控除額そのもの」と「家計への効果」を分けて考えるのがコツです。控除額のランキングは大学生>高校生ですが、児童手当を足した家計効果では高校生>大学生になり得ます。見出しで「高校生が最強」と言い切らないのは、この前提を外すと誤解になるからです。
16〜18歳が児童手当と扶養控除の両取りになっているのは、2024年10月の児童手当拡充によって生じた状態です。これを受けて、高校生年代の扶養控除を38万円から25万円(住民税は33万円→12万円)に縮小する案が令和6年度の税制改正大綱に盛り込まれました。その後、令和8年度税制改正大綱(2025年12月)ではこの縮小は見送られ、現時点では38万円が維持されています。ただし議論そのものが終わったわけではないため、この「逆転」が恒久的なものとは限らない点には注意が必要です。
もっと具体的に知りたいです。うちは年収600万円くらいで、大学生の子が1人います。扶養控除があるのとないのとで、税金はどれくらい変わるんですか?
結論から言うと、年に約10.9万円、税負担が軽くなるよ。内訳は所得税が約6.4万円、住民税が約4.5万円。表にして並べてみるね。
| 項目 | 控除なし | 控除あり | 差 |
|---|---|---|---|
| 給与収入 | 600万円 | 600万円 | — |
| 給与所得控除 | 164万円 | 164万円 | — |
| 給与所得 | 436万円 | 436万円 | — |
| 社会保険料控除 | 約90万円 | 約90万円 | — |
| 基礎控除(所得税) | 68万円 | 68万円 | — |
| 扶養控除(所得税) | 0円 | 63万円 | 63万円 |
| 課税所得(所得税) | 278万円 | 215万円 | ▲63万円 |
| 所得税(復興税込) | 約18.4万円 | 約12.0万円 | ▲6.4万円 |
| 住民税(所得割) | 約30.3万円 | 約25.8万円 | ▲4.5万円 |
| 年間の税負担 | 約48.7万円 | 約37.8万円 | ▲10.9万円 |
※表は左右にスクロールできます。金額はすべて概算です。
この表から読み取れるのは、「控除額63万円 × 税率」がそのまま減税額になっているということです。所得税では63万円 × 約10.21%=約6.4万円、住民税では45万円(住民税での特定扶養控除の額)× 10%=4.5万円。合わせて年約10.9万円です。月に直すと約9,000円で、これが大学の4年間続けば40万円以上の差になります。年末調整で扶養の記入を忘れると、この分をまるごと取りこぼすことになるので注意しましょう。
ちょっと気になったんですが、同じ大学生1人でも、年収が高い家庭のほうが得する金額は大きくなるんですか?
本当だよ。扶養控除は「所得を減らす」しくみだから、税率の高い人ほど戻ってくる金額が大きくなるんだ。同じ63万円の控除でも、税率10%の家庭と20%の家庭では減税額が違ってくる。
| 課税所得 | 所得税率 | 大学生(19〜22歳) | 高校生(16〜18歳) |
|---|---|---|---|
| 195万〜330万円 | 10% | 約10.9万円 | 約7.2万円 |
| 330万〜695万円 | 20% | 約17.4万円 | 約11.1万円 |
| 695万〜900万円 | 23% | 約19.3万円 | 約12.2万円 |
※表は左右にスクロールできます。減税額は概算です。
表のとおり、大学生1人でも税率10%区分なら約10.9万円、20%区分なら約17.4万円と、同じ制度でも世帯の課税所得によって得する金額は変わります。住民税は一律10%なので差はつきませんが、所得税の部分で差が広がるためです。「わが家はいくら得か」を知りたいときは、まず自分の課税所得の区分を確認するのが近道です。
実は上の子が大学に行かずに働き始めそうなんです。「特定扶養控除は大学生向け」って聞いたんですが、大学生じゃないと63万円の控除は使えないんですか?
そこは大きな誤解だよ。扶養控除に「学生であること」という条件は一切ないんだ。年齢が19〜22歳であれば、フリーターでも浪人中でも、条件を満たせば特定扶養控除63万円が使える。判定のポイントは「学校に行っているか」ではなく「その子の年収がいくらか」なんだ。
年収……。昔は「103万円の壁」ってよく聞きましたけど、いまもそうなんですか?
そこが2025年に大きく変わったところなんだ。19〜22歳の子については、アルバイトで年収150万円まで稼いでも、親の控除は63万円のまま満額使える。旧「103万円の壁」で就業調整していた人には、いちばん実用的な変化だよ。
| 子の状況 | 子の年収 | 親が受けられる控除 |
|---|---|---|
| 大学生・アルバイトあり | 100万円 | 63万円(満額) |
| 大学に行かずフリーター | 120万円 | 63万円(満額) |
| 大学に行かずフリーター | 160万円 | 特定親族特別控除で段階的に減額 |
| 就職 | 250万円 | 0円 |
| 浪人・無職 | 0円 | 63万円(満額) |
※表は左右にスクロールできます。
もう少し正確に言うと、19〜22歳の子は給与年収123万円までが従来の特定扶養控除(63万円)の対象です。これを超えても、2025年に新設された特定親族特別控除により、給与年収150万円までは控除額63万円がそのまま維持され、150万円を超えると段階的に減って、188万円で対象外になります。つまり「大学生かどうか」ではなく「子の年収が150万円を超えていないか」で見ればよい、というのが実用的な目安です。旧「103万円の壁」で就業調整していたご家庭は、いまは150万円まで気にせず働ける、と考えておくと分かりやすいでしょう。
ここまでの「年収123万円(段階適用で188万円まで)」は税金(所得税・住民税)の扶養の話です。会社の健康保険の被扶養者は「年収130万円未満」という別の基準で、判定の方法(見込み年収で見るなど)も異なります。子の年収が130万円前後になるときは、税と健康保険で扱いが分かれる点に注意してください。
うちは共働きなんですが、子どもの扶養控除は私(夫)と妻、どちらの年末調整に書くのが得なんですか?両方に書いてもいいんですか?
まず大前提として、同じ子を夫婦2人で重複して控除に入れることはできない。どちらか一方だけだ。そのうえで、原則は収入が高く税率の高いほうにつけるのが世帯として得になるよ。
あ、さっきの「税率が高いほど戻る金額が大きい」につながるんですね。
そう。たとえば夫が税率20%区分、妻が10%区分なら、大学生1人を夫につければ約17.4万円、妻につければ約10.9万円。同じ控除でも6万円以上変わる。だから基本は「税率の高いほう」に寄せる、と覚えておけばいい。
結論として、共働きで子を扶養に入れるときは、課税所得(税率)が高いほうの親につけるのが世帯最適です。ただし重複はできないので、夫婦どちらか一方に決める必要があります。児童手当の受給者や、勤務先の家族手当の要件と絡むこともあるので、迷ったら世帯全体の手取りで比べてみてください。
2025年に税制が大きく変わったと聞きました。扶養控除まわりでは、結局なにが変わったんですか?
ポイントは3つ。①扶養控除の金額(38万円・63万円など)そのものは変わっていない。②19〜22歳の子がアルバイトで稼げる上限が、実質103万円から150万円(満額)〜188万円(段階)まで広がった。③所得税の基礎控除が引き上げられた。ただし③には"期間限定"の部分があるんだ。
期間限定……?基礎控除が上がったのに、また下がることがあるんですか?
そうなんだ。この記事の年収600万円の例で使った「基礎控除68万円」は、令和7年分と令和8年分の2年間限定の上乗せ措置なんだ。だから来年以降の制度改正の動きは、ニュースで追っておいたほうがいいよ。
整理すると、2025年(令和7年)の改正で扶養控除の金額表は変わっていませんが、その周辺が動きました。特に大きいのは特定親族特別控除の新設で、19〜22歳の子の「働ける上限」が広がったことです。一方で、引き上げられた所得税の基礎控除のうち、合計所得655万円以下の層への上乗せ(合計所得に応じて95万円・88万円・68万円・63万円)は、令和7年分と令和8年分の2年間限定の措置とされています。令和9年分(2027年)以降は、この記事で使った「課税所得278万円」が同じ年収でも約10万円増える見込みです。制度は毎年見直されるため、最新の公式情報を確認するようにしてください。
扶養している人数と年齢は、税金だけでなくふるさと納税の控除上限額も直接動かします。控除上限は世帯の課税所得で決まるため、扶養控除で課税所得が下がると、ふるさと納税で使える枠も変わります。あわせて確認しておくと、年末の手続きがスムーズになります。
この記事は国税庁・こども家庭庁・財務省の公開資料をもとに作成しています。制度改正があった場合は内容を更新します。
※本記事は2026年7月時点の法令・公表情報に基づく概算です。最新の情報は必ず公式サイトでご確認ください。