この記事の要点
家を建てること自体が危険なのではなく、住宅会社の経営状況、支払い条件、完成保証の有無まで確認してから契約することが大切です。
目次
結論:家を建てること自体が危険なのではない
家を建てるとき、多くの人は「価格」「間取り」「住宅性能」「住宅ローン」を比較します。
ただ、現在はもう一つ確認しておきたい項目があります。
それは、建築を依頼するハウスメーカーや工務店が、住宅の完成まで事業を継続できるかという点です。
東京商工リサーチによると、2026年上半期の「木造建築工事業」の倒産は118件で、前年同期比87.3%増加しました。上半期で100件を超えたのは2013年以来13年ぶりです。なお、この統計は負債1,000万円以上の倒産を対象としており、「すべてのハウスメーカー」を意味する数字ではありません。(株式会社東京商工リサーチ)
また、帝国データバンクによると、2026年上半期の建設業では倒産が1,043件、休廃業・解散が4,894件発生し、合計5,937件が市場から撤退しました。これは上半期として過去最多です。木造戸建て住宅などを手がける「木造建築工事」では、倒産・休廃業・解散を合わせた撤退が947件に達しています。(TDB)
とはいえ、これらの数字だけを見て「今から家を建てるのは危険」と考える必要はありません。
大切なのは、住宅価格や性能だけでなく、建築会社の経営リスク、支払い条件、完成保証の有無まで確認して契約することです。
住宅会社を取り巻く環境は厳しくなっている
住宅会社の経営環境が厳しくなっている理由は一つではありません。
建築資材や土地価格の高騰、人件費や外注費の増加、人手不足、住宅ローン金利の上昇、新設住宅着工の減少など、複数の要因が重なっています。
住宅を購入する側から見れば、以前と同じような住宅でも総額が高くなりやすく、住宅ローン金利まで上昇すれば毎月の返済負担も増えます。
一方、住宅会社側も、建築コストの上昇をすべて販売価格に転嫁できるとは限りません。
さらに帝国データバンクは、2025年4月からの建築基準法改正による「4号特例」の縮小などに伴い、確認申請の厳格化や設計・申請にかかる時間の増加、着工の遅れ、工期の長期化なども事業者の負担になっていると指摘しています。(TDB)
つまり、
家を買う側の負担が増えている一方で、家を建てる側の経営も簡単ではなくなっている
という状況です。
もちろん、倒産件数が増えているからといって、すべての住宅会社が危険という意味ではありません。
会社ごとの財務状況や受注状況、事業規模は大きく異なるため、個別に確認することが重要です。
最も注意したいのは建築途中の倒産
建築会社が倒産したからといって、すでに完成して引き渡された住宅が突然なくなるわけではありません。
大きな問題になりやすいのは、契約後から完成・引き渡しまでの期間です。
工事途中で建築会社が事業を継続できなくなると、
- 支払済みの着手金や中間金が戻らない
- 工事が長期間中断する
- 別の会社へ工事を引き継ぐ必要がある
- 引き継ぎに伴う追加工事費が発生する
- 住宅ローンやつなぎ融資の調整が必要になる
- 当初予定していた予算や仕様で完成できなくなる
といった問題が起こる可能性があります。
私自身、以前、家を建てる前に依頼先の住宅会社が倒産し、支払ったお金や借入の問題を抱えた人の話を聞いたことがあります。
最終的には別の会社で再び資金を工面し、当初予定していた住宅より規模を抑えた平屋を建てたそうです。
これはあくまで私が聞いた一例であり、倒産時の結果は契約内容や工事の進捗、融資状況によって異なります。
ただ、住宅会社が完成前に倒産すると、家だけでなく資金計画そのものが大きく変わる可能性があることは知っておきたいところです。
前払い金が大きすぎないか確認する
契約時に特に確認したいのが、建築費の支払いスケジュールです。
注文住宅では、
契約時
↓
着工時
↓
上棟時
↓
完成・引き渡し時
など、複数回に分けて代金を支払うケースがあります。
このとき、工事の進捗に比べて支払いが大きく先行していると、万一会社が倒産した際の損失も大きくなる可能性があります。
契約前には、
**「いつ、いくら払うのか」
「その時点で工事はどこまで進んでいる予定なのか」**
を確認しておきたいところです。
大手ハウスメーカーなら安心なのか
私自身、家を建てるときには、構造の頑丈さや安心感から大手ハウスメーカーにも魅力を感じました。
ただ、実際に予算を考えると、大手では同じ予算で建てられる家がかなり小さくなってしまいました。
最終的には、価格と広さのバランスを考えて別の住宅会社を選びました。
大手ハウスメーカーには、一般に、
- 資金力が比較的大きい
- 品質管理や施工管理の仕組みが整っている
- 研究開発体制がある
- アフターサービス網が広い
- 上場企業であれば決算情報を確認しやすい
といった安心材料があります。
一方で、その体制を維持するためのコストは住宅価格にも反映されます。
倒産リスクが気になるからといって、予算を大きく超える住宅会社を選べば、今度は住宅ローンや家計の負担が大きくなるかもしれません。
そのため、
大手だから正解、地場工務店だから危険
と単純に判断するのではなく、価格、住宅性能、広さ、会社の経営基盤を総合的に考える必要があります。
地場工務店や中小の住宅会社で確認したいこと
地場工務店には、大手にはない魅力もあります。
地域事情に詳しかったり、間取りや仕様の自由度が高かったり、同じ予算でも広い家を建てやすかったりする場合があります。
一方で、非上場企業では財務内容を一般の施主が確認しにくいこともあります。
契約前には、少なくとも次のような項目を確認しておくと安心です。
- 創業年数や事業歴
- 最近の施工実績
- 年間施工棟数
- 支払いスケジュール
- 着手金・中間金の金額
- 工事進捗と支払い時期の関係
- 住宅完成保証制度を利用できるか
- 保証書が発行される時期
- アフターサービスの担当窓口
- 工事継続不能になった場合の対応
口コミや紹介も参考にはなりますが、それだけで判断するのではなく、契約書や保証書など書面で確認することが重要です。
安心を得る方法の一つ「住宅完成保証制度」
住宅会社の倒産などによる工事中断に備える方法の一つが、住宅完成保証制度です。
たとえば住宅保証機構の住宅完成保証制度では、登録事業者が倒産などによって工事を継続できなくなった場合、住宅を完成させるために必要となる増嵩工事費用や、前払い金損失の一定割合を保証する仕組みがあります。
制度を利用できる事業者は、住宅保証機構による経営状態などの審査を受け、登録された事業者です。(まもりず)
ただし、ここは注意が必要です。
完成保証がある=すべての損失が100%補償される、ではありません。
保証対象、保証割合、保証限度額などには条件があります。
また、住宅会社が完成保証制度に登録していても、自分が建てる住宅について保証手続きが行われていなければ保証対象にならない場合があります。
そのため契約前に、
「この住宅は完成保証の対象ですか?」
「保証限度額はいくらですか?」
「前払い金はどこまで保証されますか?」
「保証書はいつ発行されますか?」
と確認しておくことが大切です。
なお、住宅完成保証制度は住宅保証機構以外にも提供されているため、利用する住宅会社がどの制度を採用しているか確認してください。
住宅完成保証と住宅瑕疵保険は別物
住宅完成保証と住宅瑕疵担保責任保険は、似た名前ですが目的が違います。
| 制度 | 主なタイミング | 主な目的 |
|---|---|---|
| 住宅完成保証 | 建築中 | 住宅会社の倒産などによる工事中断への備え |
| 住宅瑕疵担保責任保険 | 完成・引き渡し後 | 構造部分や雨漏りなど重大な瑕疵への備え |
つまり、
完成保証=家が完成しないリスクへの備え
瑕疵保険=完成した家に重大な欠陥があった場合への備え
です。
契約時には「保証があります」と言われただけで安心せず、何を保証する制度なのかまで確認しておきましょう。
私が今から家を建てるなら確認すること
もし私が今、もう一度家を建てるとしたら、以前より確認する項目は確実に増えると思います。
以前は、
- 建築価格
- 間取り
- 住宅性能
- 住宅ローン
といった項目を中心に比較していました。
現在なら、そこに、
- 建築会社の経営状況
- 建築費の支払い条件
- 住宅完成保証の有無
- 保証限度額
- 万一の場合の工事引き継ぎ
- 完成後のアフターサービス
も加えます。
もちろん、一般の施主が住宅会社の財務状況を完全に見抜くことは難しいでしょう。
だからこそ、複数社を比較し、保証内容を書面で確認し、前払い金を必要以上に大きくしないことが大切です。
契約を急かされたり、保証内容について具体的な説明がなかったりする場合には、一度立ち止まって確認したほうが安心です。
まとめ:価格だけでなく「完成まで任せられるか」を見る
住宅価格が上昇している今、できるだけ建築費を抑えたいと考えるのは当然です。
一方で、価格だけを基準に住宅会社を選べば、建築途中の倒産や追加負担といったリスクを見落とす可能性があります。
逆に、安心感だけを求めて予算を大きく超える住宅会社を選べば、住宅ローンが家計を圧迫するかもしれません。
大切なのは、
価格・住宅性能・広さ・経営基盤・支払い条件・完成保証・アフターサービス
をバランスよく比較することです。
住宅会社の倒産ニュースを必要以上に恐れる必要はありません。
ただ、
「どんな家を建てるか」と同じくらい、「安心して完成まで任せられるか」も確認する。
これから家を建てるなら、その視点も持っておきたいところです。
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- 東京商工リサーチ:ハウスメーカーの倒産、26年上半期9割増の衝撃
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- 住宅保証機構:住宅完成保証制度