「あのとき買っておけば……」

誰もが一度は考える「たられば」を、今回は本気で計算してみました。

お題はこうです。10年前の2016年6月、100万円を「S&P500」「オルカン(全世界株式)」「金(ゴールド)」にそれぞれ一括投資して、2026年6月に全部売ったら、手取りでいくら儲かったのか?

よくある「○倍になりました!」という話と違うのは、手数料・信託報酬・税金・維持費まで全部引いた「手取り」で比べるところ。とくに金は税金の仕組みが株とまったく違うので、最後に面白い逆転劇が待っています。

結論:手取り利益ランキング

先に結果をどうぞ。100万円を10年運用して全売却、税金・手数料を引いた手取りベースです。

順位資産売却前の評価額税金手取り額純利益
🥇 1位金(ゴールド)約499万円約52万円約447万円+約347万円
🥈 2位オルカン(全世界株式)約420万円約65万円約355万円+約255万円
🥉 3位S&P500約332万円約47万円約285万円+約185万円
参考定期預金(年0.01%)約100.1万円ほぼ0円約100.1万円+約1,000円

この10年に限れば、1位は金でした。100万円が約5倍になった計算です。しかも面白いのは、3資産の中でいちばん儲かった金が、税金はいちばん安いこと。理由は後半で解説します。

そして定期預金は10年でプラス約1,000円。これが「お金に働いてもらうかどうか」の差です。

計算の前提条件(重要)

「たられば」企画こそ前提が命です。検算できるよう、すべて書いておきます。

  • 投資期間:2016年6月に100万円を一括投資 → 2026年6月に全売却
  • 株式インデックスのリターン:円建て・配当込み指数の過去10年・年率平均(2026年5月末時点、myindex掲載値)を使用
    • S&P500(配当込み・円):年率+13.2%
    • MSCI ACWI=オルカンの連動指数(配当込み・円):年率+15.9%
  • 投信のコスト:信託報酬・外国税などの実質コストとして年0.4%を控除(購入手数料は無料=ノーロードを想定)
  • 投信の税金:特定口座(課税口座)を想定し、売却益に20.315%
  • 金の価格:田中貴金属の店頭小売価格(税込)の公表値を使用。2016年6月10日 4,748円/g → 2026年6月10日 24,168円/g(約5.1倍)
  • 金のコスト:購入時手数料(バーチャージ等)1%、売却時は買取価格を「小売価格−1%」と仮定。保管は自宅(維持費0円)を想定
  • 金の税金:保有5年超の「長期譲渡所得」として総合課税。(売却益−特別控除50万円)×1/2が課税対象。税率は課税所得500万円の会社員を想定し所得税20%+住民税10%(復興特別所得税は省略)

⚠️ 正直な注意書き

①オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)の設定は2018年なので、10年前には存在しません。本記事は「同じ指数(MSCI ACWI)に連動する投信を買えたと仮定」した試算です。②株式は2026年5月末、金は6月10日と基準日が少しずれています。③為替・指数・金価格の数値は出典により多少異なります。

エントリー①:S&P500 — 100万円 → 手取り約285万円

米国の代表500社に投資するS&P500。円建て・配当込みで年率+13.2%(過去10年)でした。

項目金額
10年後の評価額(実質コスト年0.4%控除後)約332万円
売却益約232万円
税金(20.315%)▲約47万円
手取り額約285万円(純利益+約185万円)

10年で約2.8倍(手取りベース)。「3位」とはいえ、十分すごい成績です。買った2016年6月は英国のEU離脱ショック(ブレグジット)で世界中が大荒れだった時期。「怖いニュースのときに買った人」が10年後に笑った形です。

なお、この円建てリターンには円安の追い風が大きく含まれています。2016年6月のドル円はおおむね105円前後、現在は160円前後と報じられており、円建ての成績の相当部分は為替によるものです。

エントリー②:オルカン(全世界株式) — 100万円 → 手取り約355万円

全世界の株式に丸ごと投資するオルカン(連動指数:MSCI ACWI)。円建て・配当込みで年率+15.9%(過去10年)でした。

項目金額
10年後の評価額(実質コスト年0.4%控除後)約420万円
売却益約320万円
税金(20.315%)▲約65万円
手取り額約355万円(純利益+約255万円)

「えっ、オルカンがS&P500に勝ったの?」と驚いた方、鋭いです。少し前まで「過去10年はS&P500の圧勝」と言われていました。しかし直近1年は全世界株(+44.5%)が米国株(+22.0%)を大きく上回ったと公表されており、10年集計でも逆転が起きています。

「どの国が勝つかは予想しない。全部まとめて買う」というオルカンの思想が、この10年ではきれいに機能した形です。オルカン vs S&P500の比較記事もあわせてどうぞ。

エントリー③:金(ゴールド) — 100万円 → 手取り約447万円

そして優勝は、まさかの金。田中貴金属の公表値で、店頭小売価格は4,748円/g(2016年6月10日)→ 24,168円/g(2026年6月10日)と約5.1倍になりました。

項目金額
購入できた量(手数料1%込み)約208.5g
売却額(買取価格=小売−1%と仮定)約499万円
売却益約399万円
税金(長期譲渡所得・下で解説)▲約52万円
手取り額約447万円(純利益+約347万円)

背景には、各国中央銀行の金買い・地政学リスク・インフレ、そして円安があります。とくに2024年以降の上昇が急で、2026年1月には史上最高値をつけました(その後6月に急落した経緯はこちらの記事で解説しています)。

ただし金には注意点もあります。利息も配当も生まないので、株のような「複利の再投資」は起きません。値上がりだけが頼りです。また自宅保管なら維持費0円ですが盗難リスクがあり、銀行の貸金庫を借りると年1〜2万円程度かかるのが一般的です(10年で15万円前後=利益が約15万円減る計算)。

税金の違いが面白い:金の「意外な優遇」

今回いちばんの発見はここです。いちばん儲かった金(益399万円)の税金が約52万円で、2位のオルカン(益320万円)の税金約65万円より安いのです。

理由は、税金の計算ルールがまったく違うから。

投資信託(株式)金(現物・5年超保有)
税金の種類申告分離課税総合課税(譲渡所得)
税率一律20.315%給与などと合算した所得税率(人による)
優遇特別控除50万円5年超保有で課税対象が半分
今回の課税対象益の全額(399万−50万)÷2=約174万円だけ

金を5年超持ってから売ると、「50万円引いてから半分にした金額」にしか課税されません。もし金にも投信と同じ20.315%がかかっていたら税金は約81万円。長期保有の優遇だけで約29万円違った計算です(※税率は所得によって変わります。今回は課税所得500万円の会社員を想定)。

💡 逆に、投信には最強の優遇がある

それがNISAです。今回の試算は課税口座前提でしたが、新NISAで買っていればS&P500の税金47万円もオルカンの65万円も丸ごとゼロ。手取りはオルカンで約420万円になります。「税金まで考えた投資」では、投信×NISAの組み合わせが王道と言われる理由です。→ 新NISAとは?

この検証から学べる4つのこと

① 「持っているだけ」の差が、10年で数百万円。定期預金は+1,000円、投資は+185万〜347万円。もちろん投資は元本割れのリスクと引き換えですが、「リスクを取らないこと」にも機会損失という代償があることがわかります。

② 勝者は事前にわからない。10年前、「これからは金の時代」と言い切れた人はほぼいません。5年前なら「S&P500一択」が多数派でした。結果はオルカンがS&P500を逆転し、金が優勝。当てにいくより、分散するのが凡人の最適解です。

③ 手数料と税金は「確実なマイナスリターン」。相場は読めませんが、コストは確実に効きます。低コスト投信を選ぶ・NISAを使う・金は5年超持つ——ルールを知るだけで手取りが数十万円変わりました。

④ 円建てリターンの一部は「円安」。この10年でドル円は105円前後→160円前後。外貨資産の成績には為替の追い風が大きく乗っています。逆に円高に振れれば、同じ指数でも円建てでは目減りします。外貨資産と円資産のバランスは意識しておきたいところです。

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注意:この10年が「特別」だった可能性

最後に、水を差すようですが大事な話を。

  • この10年は「世界的な株高+歴史的な金の急騰+大幅な円安」が全部重なった、かなり恵まれた10年でした。次の10年も同じとは限りません
  • 金は2026年1月の史上最高値のあと、6月には急落しています。「過去5倍になったから、これからも上がる」とは言えません
  • 一括投資は買うタイミングの運に左右されます。タイミングの運をならしたい人には積立投資という方法があります
  • ご自身の資産配分(預貯金と投資のバランス)を確認したい方は、無料ツール「あしたの総合分析シート」でグラフ付きの簡易診断ができます

まとめ

  • 2016年6月の100万円一括投資、手取り純利益は金+約347万円 > オルカン+約255万円 > S&P500+約185万円(試算)
  • 定期預金なら+約1,000円。「何で持つか」の差は10年で数百万円
  • 金は5年超保有の税優遇(50万円控除+課税対象1/2)で、最多利益なのに最少税額に
  • 投信はNISAを使えば税金ゼロにできた。コストと税金の知識は確実に効く
  • ただしこの10年は株高・金高・円安がそろった追い風の10年。次の勝者は誰にもわからないからこそ、分散と長期

📚 主な出典

・S&P500(配当込み・円)/MSCI ACWI(配当込み・円)の過去10年年率リターン:myIndex(2026年5月末時点)
・金の店頭小売価格:田中貴金属工業の公表データ(2016年・2026年)
・ドル円相場:2016年6月の月中推移および2026年6月10日時点の報道値

【免責事項】本記事は2026年6月11日時点の公開情報に基づく簡易試算であり、実際の運用成果・税額とは異なる場合があります。リターン・価格・為替の数値は出典や基準日により異なります。税金は個人の所得状況により変わるため、正確には税務署・税理士にご確認ください。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の商品の売買を推奨するものではありません。投資にはリスクがあり、元本割れの可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いします。