「定年したら旅行に行きたい」「いつか趣味を本格的に始めたい」——。

こうした「いつかやりたい」は、残念ながら、たいてい一生やりません。理由はシンプルで、「いつ」を決めていないからです。

そこでおすすめしたいのがタイムバケット。人生をいくつかの期間(バケツ)に区切り、やりたいことを「どのバケツでやるか」まで決めてしまう方法です。書籍『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著)で広く知られるようになった考え方で、ポイントはただ一つ。

タイムバケットの大原則

体力が要ることほど、早いバケツに入れる。
お金より先に「体力」という資産が減っていくからです。お金は後からでも増やせますが、体力は戻ってきません。

この記事では、52歳の私が実際に作った「お金と時間の状況が変わる4つの節目」での区切り方を、そのままテンプレートとして紹介します。

タイムバケットとは? なぜ「いつか」ではダメなのか

タイムバケットは、「死ぬまでにやりたいことリスト」を一歩進めた考え方です。リストを作るだけでなく、人生を期間で区切って、やりたいことを各期間に振り分けます

たとえば私は現在52歳。人生の区切りをいったん80歳と仮定すると、残りは約28年です。28年と聞くと長く感じますが、「体力が必要なことができる期間」はもっと短い。登山も、長距離の旅行も、おそらく70代後半には難しくなっていきます。

だから「いつかやる」を放置せず、お金と時間の状況が変わる節目で人生を区切って、前倒しで割り当てていくのです。50代の場合、実用的な区切りは次の4つだと考えています。

バケツ時期の目安お金体力
① 現役期今〜定年(私の場合 52〜60歳)収入あり十分
② 定年の節目定年直後(60歳ごろ)退職金+休みまだ十分
③ 定年後〜年金前60〜65歳ごろ一番厳しい低下し始め
④ 年金開始後65歳ごろ〜安定収入あり年々低下

※定年・年金の年齢は人によって異なります。ご自身のライフプランに合わせて読み替えてください。

バケツ①|定年まで(現役期)

状況:収入あり・体力十分。「お金はかかるが稼げる」時期。

費用のかかる挑戦、体力勝負のこと、準備に時間がかかることは、すべてここに入れます。私の場合は定年まであと8年。「あと8年しかない」と考えると、入れるべきものがはっきりしてきます。

  • 例:家族での海外旅行(子が独立する前に)/体力勝負の趣味/資格取得

このバケツのコツ

「子どもと一緒に」系の願いは要注意。子どもの独立はたいてい親の定年より早く来ます。家族旅行は定年後ではなく現役のうちが鉄則です。

バケツ②|定年の節目(人生一度きりのボーナス期)

状況:まとまった休みと退職金が入る、人生で一度きりのボーナス期間。

現役の収入感覚が残ったまま、初めて長い自由時間が手に入るタイミングです。「お金も時間もある」ことが重なる、人生でほぼ唯一の瞬間と言えます。ここでしかできない特別なことを1〜2個だけ入れましょう。

  • 例:長期の国内一周旅行/ずっと我慢していた特別な経験
⚠️ 退職金の使い道もここでメモ。気が大きくなって一括で大きな買い物(高級車・リフォーム・退職金での一括投資など)をしてしまうのは、よくある後悔パターンと言われます。バケツに「使っていい上限額」を先に書いておくと、ブレーキになります。

バケツ③|定年後〜年金開始前(魔の期間)

状況:収入が減る・途切れるのに、年金はまだ出ない。お金の面で一番慎重にすべき時期。

たとえば60歳定年で65歳から年金なら、この間は約5年。生活費の多くを「資産の取り崩し」でまかなう想定になるため、ここに高額な計画を入れるのは危険です。お金をあまり使わずに楽しめることを中心に入れましょう。

  • 例:家庭菜園の本格化/地域活動/近場の旅

この期間のお金の作戦は、別記事「60歳から65歳までの5年間をどう乗り切るか」で詳しく解説しています。事前に「いくら必要か」を計算しておくことが、このバケツ最大の準備です。

バケツ④|年金開始後

状況:年金という安定収入はあるが、体力は年々低下。「お金はあるが体力がない」へ移行していく時期。

ここでの鉄則は前倒し。「年金が始まったら、そのうち行こう」と後半に取っておくと、体がついてこなくなります。65〜70歳前半のうちに、やりたいことを片づけていくイメージです。

  • 例:体力のあるうちの旅行/夫婦でのんびり温泉巡り

振り分けの4つのコツ

  1. 体力が要ることは、できるだけ早いバケツへ。登山・ダイビング・長距離旅行などをバケツ④に入れない。
  2. お金は「使い切る」つもりで配分を考えてみる。使わずに残しすぎるより、元気なうちに経験に変える——これが『DIE WITH ZERO』の核心の考え方です(もちろん、必要な備えは残した上で)。
  3. バケツ③(定年後〜年金前)の資金計画が最重要。ここを乗り切れる設計ができていれば、老後不安の大半は小さくなります。
  4. 年に1回見直す。体力・お金・気持ちは変わります。一度きりで完成させないこと。

考え方のベースになった本

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール(ビル・パーキンス著)

「お金は若いうちに経験に変えるほうが価値が大きい」「思い出は配当を生む」——タイムバケットの元になった考え方が詰まった一冊。定年が見えてきた世代にこそ刺さる内容です。

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当サイトの無料ツール「あしたのお金の地図」に、このタイムバケットがそのまま組み込まれています(STEP 9・10)。

8つの質問で自分のお金の価値観を整理したあと、やりたいことリストを書き出し(STEP 9)、最後に4つのバケツへ振り分ける(STEP 10)流れです。入力内容はブラウザの中だけに保存され、外部には送信されません。紙とペンでやりたい方は、この記事の4つのバケツをそのまま書き写してもOKです。

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まとめ

  • 「いつかやりたい」は、いつまでにやるかを決めないと一生やらない
  • 人生を「①現役期 ②定年の節目 ③定年後〜年金前 ④年金開始後」の4つのバケツで区切る
  • 体力が要ることほど早いバケツへ。お金より先に体力が減っていく
  • お金の計画が一番大事なのはバケツ③。ここの設計が老後不安を左右する
  • 年に1回見直して、育てていく

私もまだバケツの中身を埋めている途中です。それでも「いつか」と言っていたことに期限がついただけで、不思議と日々の優先順位が変わってきました。まずはバケツ①に1つ、書き込んでみてください。