2026年8月1日。この日、医療費に関わるルールが2つ同時に変わりました

ひとつは高額療養費の自己負担上限の引き上げ。もうひとつはマイナ保険証への完全移行です。

ニュースではマイナ保険証のほうが大きく扱われましたが、家計への影響という意味では、両方を知っておく必要があります。しかもこの2つは無関係ではありません

この記事では「何がどう変わったか」だけを整理します。高額療養費の仕組みそのものについては、サイト内の別記事で詳しく書いていますので、そちらへリンクします。

変更点①:高額療養費の自己負担上限が上がりました

2026年8月1日から、月の自己負担限度額が引き上げられました。70歳未満の場合、次のとおりです。

年収の目安 標準報酬月額 月額上限 多数回該当
約1,160万円〜 83万円以上 270,300円+(医療費-901,000円)×1% 140,100円
約770万〜
約1,160万円
53〜79万円 179,100円+(医療費-597,000円)×1% 93,000円
約370万〜
約770万円
28〜50万円 85,800円+(医療費-286,000円)×1% 44,400円
〜約370万円 26万円以下 61,500円 44,400円
住民税非課税 36,900円 24,600円

※表は左右にスクロールできます。70歳未満の場合の金額です(出典:厚生労働省)。

年収換算で約370万〜約770万円の区分に該当する方が、会社員では最も多い層です。

【この表について】

  • 所得区分は年収そのものではなく標準報酬月額で判定されます。上の年収は厚生労働省資料に記載された換算の目安です
  • 70歳以上の方の限度額は、この表とは異なります
  • 加入している健康保険組合に独自の「付加給付」がある場合、実際の負担はさらに軽くなることがあります
  • ご自身の区分と正確な金額は、加入先の健康保険(協会けんぽ・健保組合・市区町村の国民健康保険など)でご確認ください

見落とされがちな「計算式の変更」

引き上げられたのは頭の金額だけではありません。式の中の数字も変わっています。

計算式
2026年7月まで80,100円+(医療費-267,000円)×1%
2026年8月から85,800円+(医療費-286,000円)×1%

※表は左右にスクロールできます。年収約370万〜約770万円の区分の場合です。

医療費が100万円かかった場合で比べると、こうなります。

  • 2026年7月まで:80,100+(1,000,000-267,000)×1% = 87,430円
  • 2026年8月から:85,800+(1,000,000-286,000)×1% = 92,940円

差額は5,510円。「87,430円」という数字を覚えていた方は、更新が必要です。

据え置かれたものもあります

多数回該当は全区分で据え置きです。

多数回該当とは、直近12か月に3回以上高額療養費を受けた場合、4回目以降の上限がさらに下がる仕組みのこと。ここが変わらなかったため、長期にわたって治療が続いている方への影響は限定的です。

逆に言えば、単発で高額な医療を受ける人ほど、素直に負担増になります

制度そのものの仕組みは、高額療養費の仕組みと退職後の健康保険3択の記事で詳しく解説しています。

変更点②:あまり報じられていない「年間上限」の新設

今回の見直しで、年間の自己負担上限が新たに設けられました

年収の目安年間上限
約1,160万円〜168万円
約770万〜約1,160万円111万円
約370万〜約770万円53万円
〜約370万円53万円
住民税非課税29万円

※表は左右にスクロールできます。70歳未満の場合の金額です(出典:厚生労働省)。

月ごとの自己負担が積み上がっても、年間の上限に達したあとは、その年はそれ以上の支払いが不要になります。

月額上限の引き上げばかりが報じられましたが、こちらは負担が軽くなる方向の変更です。厚生労働省の資料でも、多数回該当に当たらない長期療養者への配慮として位置づけられています。

なお、年収換算で約200万円以下の区分に該当することが確認できた方には、年間上限41万円が適用されます。ただしこちらは2027年8月以降に償還払いという扱いです。

出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」

変更点③:マイナ保険証への完全移行

同じ2026年8月1日、こちらも動きました。

従来の健康保険証は2025年12月1日に効力を失っていましたが、その後も「期限切れの保険証でも資格が確認できれば受診可能」とする暫定措置が続いていました。この措置が2026年7月31日で終了しました。

8月1日以降、医療機関で必要なのは次のどちらかです。

  • マイナ保険証(マイナンバーカード+保険証利用登録)
  • 資格確認書(健康保険への加入を証明する紙の書類)

どちらもない場合、原則として窓口でいったん医療費の全額(10割)を支払うことになります。後日、領収書などを添えて加入先に療養費の支給申請をすれば、自己負担分を超えた額は還付されます。

75歳以上の後期高齢者医療制度の加入者に自動交付されていた資格確認書も、同じく2026年7月末で終了しています。

見落としやすい「3か月の猶予」

マイナンバーカードの電子証明書の有効期限が切れても、すぐに使えなくなるわけではありません。期限切れから3か月間は、マイナ保険証として利用できます。

更新手続きは有効期限の3か月前から可能です。心当たりのある方は、お住まいの市区町村の窓口で早めに手続きを。

この2つは、実はつながっています

ここがこの記事でいちばん伝えたい部分です。

マイナ保険証を使うと、高額療養費の窓口負担が変わります。

従来、窓口での支払いを限度額までに抑えるには、事前に「限度額適用認定証」を申請して発行してもらう必要がありました。申請から発行まで数日から1週間かかることもあり、急な入院では間に合わないケースがありました。

マイナ保険証を提示し、限度額情報の提供に同意すれば、この事前申請なしで窓口負担が限度額までで止まります

つまり、同じ手術を受けても、マイナ保険証があるかないかで窓口で払う金額が変わるということです。

ただし「マイナ保険証なら全部自動」ではありません

ここは正確に押さえておく必要があります。次の場合は自動適用になりません。

条件どうなるか
医療機関がオンライン資格確認に未対応自動適用されない
資格確認書で受診する場合従来どおり限度額適用認定証の事前申請が必要になる場合があります
住民税非課税世帯(低所得区分)マイナ保険証でも別途申請が必要な場合がある

※表は左右にスクロールできます。

特に3つ目は見落とされがちです。低所得区分の適用を受けるには、「限度額適用・標準負担額減額認定申請書」の事前提出を求められることがあります。

同意の取り方や運用の細部は、加入先の健康保険によって説明が異なります。入院の予定がある方は、事前に加入先へ確認しておくのが確実です。

制度そのものを詳しく知りたい方へ

この記事は「2026年8月に何が変わったか」に絞って書きました。

高額療養費の仕組み、対象にならない費用、月をまたぐ場合の扱い、退職後の健康保険との関係などは、別記事で詳しく解説しています。

よくある質問

Q. 高額療養費の自己負担上限はいつから上がりましたか?

2026年8月1日診療分から引き上げられました。年収換算で約370万〜約770万円の区分の場合、月額上限は85,800円+(医療費-286,000円)×1%です。計算式の中の数字も変わっているため、医療費100万円の自己負担は87,430円から92,940円になります。2027年8月には所得区分が5区分から13区分に細分化される予定です。

Q. 2026年8月1日から健康保険証は使えなくなったのですか?

はい。従来の健康保険証は2025年12月1日に効力を失い、その後の暫定措置も2026年7月31日で終了しました。8月1日以降はマイナ保険証か資格確認書のどちらかが必要です。

Q. マイナ保険証も資格確認書もない場合、どうなりますか?

原則として、窓口でいったん医療費の全額(10割)を支払うことになります。後日、領収書などを添えて加入先の健康保険に療養費の支給申請をすれば、自己負担分を超えた額の還付を受けられます。

Q. マイナ保険証があれば限度額適用認定証は不要ですか?

オンライン資格確認に対応している医療機関では、原則として事前申請なしで窓口負担が限度額までになります。ただし住民税非課税世帯など、別途申請が必要な場合もあります。資格確認書で受診する方は、従来どおり限度額適用認定証の申請が必要になる場合があります。

まとめ

📝 2026年8月に変わったこと

  • 2026年8月1日から、高額療養費の月額上限が引き上げ(年収約370万〜770万円の区分は85,800円+1%)
  • 計算式の中の数字も変わった(267,000円→286,000円)。医療費100万円なら87,430円→92,940円
  • 多数回該当は据え置き。長期療養中の方への影響は限定的
  • 年間上限が新設された(年収約370万〜770万円の区分は53万円)。こちらは負担軽減の方向
  • 同じ日、マイナ保険証への完全移行が完了。マイナ保険証か資格確認書がないと原則10割負担
  • 電子証明書の期限切れには3か月の猶予がある
  • マイナ保険証があれば、限度額適用認定証の事前申請なしで窓口負担が限度額まで
  • ただし医療機関の対応状況や所得区分によっては、別途手続きが必要な場合がある

そして、この話はまだ終わりません。

2027年8月には第2段階として、所得区分が5区分から13区分に細分化されます。同じ年収でも該当する区分が変わり、上限額も変わる可能性があります。

今の数字がずっと続くわけではない、ということは頭の片隅に置いておきたいところです。

免責事項:本記事は情報提供を目的としたもので、特定の判断を推奨するものではありません。本記事は2026年8月1日時点の情報です。制度は今後変更される可能性があります。ご自身の所得区分や自己負担限度額については、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国民健康保険など)で必ずご確認ください。
最終更新日:2026年8月1日