はじめに、いきなり恥ずかしい数字を出します。

私は20代後半から30代前半にかけて、個別株の短期売買と信用取引にのめり込み、実現損益で約277万円のマイナスを出しました。心が折れて、一度は「もう二度と株はやらない」と市場から退場しました。

これは、その第一次投資・全敗の記録です。そして同じ口座で手法だけを変え、第二次投資では投資信託(プロにまかせる仕組み)を中心に切り替えて、生涯トータルをプラスに戻すまでの話でもあります。

「昔、株で痛い目を見た」「信用取引って実際どうなの?」——そう感じている方に、自分の失敗を正直に共有します。

先にお伝えしたいこと:この記事は個人の失敗体験の記録です。特定の銘柄・手法を推奨・否定するものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。元本保証はなく、過去の実績が将来の成果を保証するものではありません。

第1章:20代、個別株の短期売買にのめり込んだ

2005年ごろ、私は20代後半でした。証券口座を開き、最初は数十万円から個別株を買い始めたのですが、すぐに「短期売買」の魅力に取り憑かれてしまいました。

当時よく売買していた銘柄を振り返ると、伊藤園、スターバックス、ソニー、吉野家、日本風力開発、ツヴァイ、日本トイザらス……といった顔ぶれです。数日から数週間で売ったり買ったりを繰り返す、典型的な短期トレードでした。記録を見ると、取引件数は218件にのぼっていました。

少し上がったら売り、下がったら買い増す。値動きを毎日チェックしては一喜一憂する。仕事中もスマホ(当時はガラケーや会社のPC)で株価が気になって仕方がない。今思えば、投資というより「ゲーム」に近い感覚だったと思います。

短期売買(デイトレ・スイングトレード)とは

数時間〜数週間という短い期間で株を売買し、値動きの差で利益をねらう手法のこと。短期間で利益が出ることもありますが、相場の方向を当て続けるのは難しく、手数料や税金もかさみやすい手法です。

第2章:狂牛病・ライブドアショック──個別株が次々に崩れた

個別株の短期売買は、一見すると勝てているように感じる時期があります。私もしばらくは小さな利益を積み上げ、「自分には才能があるのかも」と勘違いしていました。

ところが、個別株には会社ごとの「事件」がつきものです。私が体験した当時を振り返ると、いくつかのショックが重なりました。

  • 狂牛病(BSE)問題:当時、米国産牛肉の輸入停止などをきっかけに、牛丼チェーンが看板商品の販売を一時休止するなど、外食・牛丼関連の株が大きく揺れた時期がありました。私も吉野家の株を持っていて、ニュースのたびに値動きに振り回されました。
  • 2006年 ライブドアショック:ライブドア事件をきっかけに新興市場(当時のマザーズなど)が総崩れになりました。値動きの大きい新興株を触っていた私には、直撃でした。

個別株の怖さは、「会社や業界の事情ひとつで、自分の力ではどうにもならない下げが来る」ことです。決算、不祥事、規制、一つのニュースで株価は簡単に2割、3割と動きます。短期売買はその値動きに賭ける手法なので、読みが外れた瞬間に大きな含み損を抱えます。

それでも当時の私は引き下がりませんでした。「ここで取り返せば」と、さらに踏み込んでしまったのです。次の章が、最大の失敗です。

第3章:禁断のレバレッジ「信用取引」に手を出した

負けを取り返したい——その焦りから、私は信用取引に手を出しました。

信用取引を使えば、手元の資金の何倍もの株を売買できます。「同じ値動きでも、利益(と損失)が何倍にもなる」。当時の私は、利益の部分しか見ていませんでした。少ない元手で大きく稼げる——その魔力に、あっさり取り込まれてしまったのです。

最初のうちは、レバレッジ(てこの原理=少ない資金で大きく動かすこと)が利益を膨らませてくれました。「もっと早くやればよかった」とすら思いました。これが、いちばん危険な状態でした。

これは私の失敗です:負けを取り返そうと、リスクの大きい手法に踏み込む——投資でいちばんやってはいけないパターンを、私は地で行ってしまいました。

信用取引がどういう仕組みなのか、ここで初心者の方向けに、いったん整理しておきます。仕組みを知れば、「なぜ素人が手を出すと危険なのか」がはっきりわかるはずです。

そもそも信用取引とは?(初心者向け・最新版)

信用取引とは、証券会社に「委託保証金(いたくほしょうきん=担保のお金)」を預け、それを担保にして、お金や株を借りて売買する取引のことです。現物取引(自分のお金の範囲で株を買う、ふつうの取引)と違い、手持ち以上の金額を動かせるのが最大の特徴です。

信用取引の基本のしくみ

  • レバレッジは最大およそ3.3倍:委託保証金率は最低30%と決められているため、預けたお金の約3.3倍までの取引ができます(例:30万円を預けて約100万円分の取引)。
  • 最低保証金は30万円:信用取引を始めるには、原則として30万円以上の委託保証金が必要です。
  • 「信用買い」と「信用売り(空売り)」:お金を借りて買うだけでなく、株を借りて先に売り、値下がりしたら買い戻して利益をねらう「空売り」もできます。
  • コストがかかる:買いには金利、売り(空売り)には貸株料、さらに状況によっては逆日歩(ぎゃくひぶ=品貸料)という追加コストが発生します。持っているだけで費用がかかります。
  • 返済期限がある:「制度信用取引」は原則6か月以内に決済が必要です(証券会社が独自に条件を決める「一般信用取引」もあります)。
信用取引のいちばん怖いところ:現物取引なら、最悪でも「買った株がゼロになる(=投資したお金がなくなる)」のが損失の上限です。しかし信用取引は投資した元本以上の損失が出ることがあります。さらに、相場が逆に動いて保証金が一定の割合を下回ると「追証(おいしょう=追加保証金)」を求められ、入金できなければ証券会社の判断で強制的に決済(ロスカット)されます。

覚えておきたいポイント:NISAでは信用取引はできません

NISA(少額投資非課税制度)の口座は現物取引のみで、信用取引はできません。これは「長期でコツコツ資産形成する」という制度の目的に沿った設計です。裏を返せば、信用取引はそれだけ性質の違う(=リスクの高い)取引だということです。

※ 上記は2026年6月時点の一般的なルールです。保証金率や手数料・金利などの条件は法令改正や証券会社によって変わる場合があります。実際に利用する際は、必ず各証券会社の最新の公式情報をご確認ください。

第4章:リーマン直前、追証地獄で退場

仕組みを今ならこう説明できますが、当時の私は「投資元本以上の損失」「追証」の怖さを、頭ではなく身体で味わうことになります。

2008年、世界の金融市場が大きく崩れ始めました。後にリーマンショックと呼ばれる、世界同時株安の入り口です。

短期売買と信用取引は、暴落に対して致命的に弱い組み合わせでした。レバレッジをかけているぶん、下落のダメージも何倍にもなります。含み損がふくらみ、保証金が足りなくなり、追証に追われました。追加のお金を入れては、また下がって損切り。損切りに損切りを重ねる、まさに地獄でした。

2008年6月、私は耐えきれず、口座からほぼ全額(約180万円)を出金して、市場から退場しました。皮肉なことに、それはリーマンショックが本格化する(同年9月)わずか3か月前のことでした。

「もう二度と株はやらない」。本気でそう思いました。

第5章:数字で見る惨敗

当時の実現損益(売買で確定した損益)を集計すると、こうなっていました。きれいごとを抜きにして、数字をそのまま出します。

項目金額
利益金額の合計+2,493,514円
損失金額の合計−5,264,538円
実現損益の合計−2,771,024円
取引件数218件

勝ったトレードもあったのです。利益だけ見れば約249万円。しかし、損失が約526万円。差し引きで約277万円のマイナスでした。

これが短期売買と信用取引の典型的な負け方です。小さく何度も勝っても、数回の大きな損失が、それまでの利益を全部飲み込んでしまう。コツコツ積み上げて、ドカンと失う。私はその見本のような負け方をしました。

第6章:なぜ素人は信用取引で負けるのか

今になって振り返ると、私のような普通の会社員(投資の素人)が信用取引で勝ち続けるのは、構造的にとても難しいことだったと思います。理由を整理します。

① 損失に「上限」がない

現物なら最悪でも投資額まで。でも信用取引は、相場が大きく逆に動けば、投じたお金以上の借金のような損失を背負うことがあります。リスクの天井が抜けているのです。

② 暴落で「退場」させられる

追証とロスカット(強制決済)の仕組みがあるため、「持ち続けて回復を待つ」という選択ができません。いちばん安いところで、機械的に損失を確定させられてしまいます。暴落で退場させられたら、その後の回復の恩恵を一切受けられません。

③ 時間(期限とコスト)に追われる

制度信用取引には返済期限があり、持っている間は金利や貸株料がかかります。「焦らずじっくり」が許されない設計なので、どうしても短期目線・ギャンブル寄りの判断になりがちです。

④ メンタルがもたない

レバレッジがかかると、日々の損益の振れ幅が大きくなります。少しの値動きで数万円・数十万円が動くと、冷静な判断はできません。私は値動きが気になって仕事も手につかず、夜も眠れませんでした。

正直な結論:信用取引は、仕組みやリスク管理を十分に理解したうえで使う上級者向けの道具だと、私は痛感しました。少なくとも当時の私のような「負けを取り返したい素人」が、生活資金を投じて手を出してよいものではありませんでした。

第7章:たどり着いた答え「プロにまかせる=投資信託」

市場から退場して、しばらく投資から完全に離れていました。やがて時代が変わり、つみたてNISAやインデックス投資(市場全体にまるごと分散して買う考え方)が一般に広がっていきました。

そこで私が出した結論は、とてもシンプルです。

私の出した答え

「自分で当てにいくのはやめよう。運用はプロにまかせて、投資信託でコツコツ積み立てる

投資信託とは、たくさんの投資家から集めたお金を、運用の専門家(プロ)がまとめて運用してくれる商品です。とくに「インデックスファンド」は、市場全体(たとえば米国の代表的な500社や、世界中の株式)にまるごと分散して投資する仕組みになっています。

信用取引や個別株の短期売買と、何が違うのか。私が変えたのは、実は「手法」だけです。

項目第一次投資(〜2008年)第二次投資(2021年〜)
対象個別株投資信託(S&P500・全世界)
手法短期売買毎月コツコツ積立
レバレッジ信用取引あり現物のみ(借金なし)
運用する人素人の自分運用のプロ(投資信託)
暴落が来たら追証地獄・狼狽売り・退場淡々と買い続ける(売らない)

同じ証券口座、同じ人間です。それでも、手法を変えただけで結果は真逆になりました。第二次投資では投資信託を中心に積み立て、過去の信用取引の損失(−277万円)を含めても、生涯トータルでプラスに戻すことができました。

くわしい復活の記録(実際の評価額や積立の中身)は、別の記事で数字とともに公開しています。本記事では「なぜ投資信託にたどり着いたのか」だけお伝えしておきます。

投資信託にも注意点はあります

投資信託は「プロにまかせれば必ず増える」わけではありません。基準価額は市場の影響で変動し、元本を下回ることもあります。信託報酬(運用してもらうための手数料)もかかります。ただ、現物・分散・積立という形であれば、信用取引のように「強制的に退場させられる」構造ではない、というのが私にとって大きな違いでした。

まとめ・同じ失敗をしないために

20年前の自分に伝えたいことを、5つにまとめます。

  1. 短期売買は「勝率」では勝てない。小さな利益を何度積んでも、数回の大損で全部消える。私の場合、249万円の利益が526万円の損失に飲まれた。
  2. 信用取引は暴落で「退場」させられる。追証とロスカットがある以上、回復を待つことすら許されない。素人が生活資金で手を出す道具ではない。
  3. 投資信託(プロにまかせる仕組み)は退場しにくい。現物・分散・積立なら、暴落はむしろ「安く買えるチャンス」に変わる。売らなければ負けは確定しない。
  4. 一度退場しても、戻ってこられる。手法を変えれば、同じ人間でも結果は変わる。退場したまま終わらないことが何より大事。
  5. 過去の失敗は、最高の「暴落耐性」になる。次の暴落も必ず来る。でも一度どん底を見た経験が、「ここで売ってはいけない」と教えてくれる。

投資で大切だったのは、天才的なセンスでも、完璧なタイミングでもありませんでした。「退場しない仕組み」を作って、淡々と続けること。それだけでした。

過去に投資で痛い目を見た方へ。やり方さえ変えれば、また始められます。私のように信用取引で大きく負けた人間でも、投資信託を中心に切り替えて、取り返すことはできました。

免責事項:本記事は個人の投資体験をもとにした情報提供を目的としており、特定の証券会社・投資信託・投資手法を推奨、または信用取引を一律に否定するものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。元本保証はなく、過去の実績が将来の運用成果を保証するものではありません。税制・制度・各種ルールは変更される場合があるため、最新の公式情報をご確認ください。