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「長く会社員をしてきたし、厚生年金があれば老後は何とかなる」──そう考えている方は多いのではないでしょうか。結論から言えば、厚生年金(基礎年金を含む)の平均受給額は月14万円台後半。さらに手取りはそこから減るため、年金だけで生活費をまかなうのは平均的なデータ上もゆとりが少ないのが現実です。
なぜそうなるのか。それは、現役時代の年収に対して年金の「置き換え率」が思いのほか低く、加えて税・社会保険料が差し引かれるからです。実際、年金決定通知書を受け取ったとき、現役時代の給与との落差に驚く人が後を絶ちません。
この記事では、公式データをもとに「平均受給額」「年収別の試算」「手取り」「老後の家計収支」を整理し、年下の配偶者がいる場合に関わる「加給年金」の注意点や、今からできる対策まで具体的に解説します。まずは現実を知り、自分に必要な備えを見える化していきましょう。
厚生年金の平均受給額はいくら?【2026年最新版】
厚生労働省が公表している「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号・老齢年金)受給者の平均月額(老齢基礎年金を含む)は次のとおりです。
一方、国民年金(老齢基礎年金)のみの受給者の平均月額は約5万円台後半です。厚生年金の受給者は、この基礎年金部分と厚生年金部分を合算で受け取る形になります。
厚生年金受給者は、国民年金(1階部分)+厚生年金(2階部分)を合算して受け取ります。「月14万円台後半」はこの合計額です。2階部分だけで15万円あるわけではありません。
「月15万円弱」と聞くと、決して極端に低い金額ではないように感じます。しかし、現役時代の月収が30〜50万円あった方にとっては、大幅な収入ダウンです。さらに手取りはここからさらに減ります(後述)。
年収別・標準的な年金額の試算
年金額は、現役時代の収入(報酬)と加入期間によって決まります。ここでは「40年間勤務」を前提に、年収別の概算額を示します。
計算の基本式(報酬比例部分)
2003年4月以降の加入期間については、以下の式で計算されます。
平均標準報酬額(月額)× 5.481/1000 × 加入月数
※ これに国民年金満額(2025年度=年約83.2万円・月約6.9万円)を加えた合計が年金年額になります。
※ 2003年3月以前の加入期間は別の係数(7.125/1000)を使います。
年収別・年金月額の目安(40年勤務モデル)
| 平均年収 | 平均月収(標準報酬額) | 厚生年金(報酬比例)年額 | 国民年金(満額)年額 | 合計月額(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 25万円 | 約65.8万円 | 約83.2万円 | 約12.4万円 |
| 400万円 | 33万円 | 約86.8万円 | 約83.2万円 | 約14.2万円 |
| 500万円 | 42万円 | 約110.2万円 | 約83.2万円 | 約16.1万円 |
| 600万円 | 50万円 | 約131.5万円 | 約83.2万円 | 約17.9万円 |
| 800万円 | 65万円 | 約171.0万円 | 約83.2万円 | 約21.2万円 |
※ 試算は2025年度の数値をもとに、2003年4月以降480ヶ月加入として計算。経過的加算・加給年金額は含みません。あくまで目安です。
国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は約460万円。このラインで40年働いた場合、年金月額の目安は約15万円前後となります。実際の平均受給額(約14万円台後半)とおおむね重なります。
厚生年金の手取りはいくら?税・社会保険料の現実
上記の試算はあくまで「額面」です。年金にも現役時代と同様に税金・社会保険料が課されます。
/ 国民健康保険(65〜74歳) - 約8,000〜15,000円
「月15万円もらえる」と思っていても、手取り額は居住地や保険料負担、扶養状況によって大きく異なります。額面より1〜2万円以上少なくなるケースもあるため、老後の収支計画は必ず「手取りベース」かつ余裕をもって考えましょう。正確な天引き額は、お住まいの自治体や年金事務所でご確認ください。
年金だけで生活できる?老後の家計収支を検証
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果」(2026年2月公表)をもとに、65歳以上世帯の平均的な家計収支を確認します。
📊 65歳以上・夫婦のみ無職世帯の家計収支(月額・2025年平均)
かつては「毎月5万円前後の赤字」とされた時期もありましたが、近年は年金額の改定などで実収入が増え、平均の不足額は以前より縮小しています。2025年平均では、実収入と消費支出の差は小さく、税・社会保険料を引いた手取りベースでみても「大きく余る」状態ではありません。
注意したいのは、これがあくまで平均・基本的な生活費だという点です。住居費(賃貸か持ち家か)、医療・介護費、家のリフォームや車の買い替えといった特別な支出が加わると、家計はかんたんに不足に転じます。「平均では何とかなる」と油断せず、ゆとり分は自分で備えておく必要があります。
単身世帯はどうか?
| 世帯タイプ | 実収入(月) | 状況 |
|---|---|---|
| 夫婦のみ・無職(65歳以上) | 約271,665円 | 手取りベースでは支出がやや上回る傾向 |
| 単身・無職(65歳以上) | 約131,456円 | 消費支出が収入を上回り赤字傾向 |
出典:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」。可処分所得・消費支出の詳細な内訳は、各年度で変動するため最新の公表値をご確認ください。
夫婦世帯の場合、妻がまだ年金を受け取っていない時期は特に収支が厳しくなります。妻の年金受給が始まると収入が増えて余裕が生まれますが、それまでの期間は貯蓄の取り崩しが必要になりやすいです。また、妻の年齢や年金加入状況によっては「加給年金」という上乗せを受け取れる可能性があります(次章参照)。
知らないと損する「加給年金」──年間約40万円の上乗せ
厚生年金には、条件を満たすと配偶者がいる場合に上乗せされる「加給年金」という制度があります。年金額に直結するにもかかわらず、意外と知られていない制度です。
加給年金とは?
配偶者がいること
十分に受給できる場合
年齢差が大きい夫婦ほど恩恵が大きい
加給年金が支給されるのは、受給者(夫)が65歳になってから、配偶者(妻)が65歳になるまでの期間です。夫婦の年齢差が大きいほど、受給できる期間が長くなります。
| 夫婦の年齢差 | 加給年金の受給期間(目安) | 受取総額(目安) |
|---|---|---|
| 5歳差 | 約5年間 | 約200万円 |
| 10歳差 | 約10年間 | 約400万円 |
| 12歳差 | 約12年間 | 約480万円 |
| 15歳差 | 約15年間 | 約600万円 |
※ 年間約40万円で試算。実際の額は年度によって異なります。
「もらえるはずが、もらえなかった」ケースに注意
加給年金は、配偶者(妻)が老齢厚生年金などを十分に受給できる資格を持つ場合、支給が停止されることがあります。共働きで妻もフルタイムで長く働いてきた場合は、このケースに該当する可能性があります。
「妻が年下だから加給年金をもらえる」と思い込むのは要注意です。支給要件は制度改正もあり複雑なため、妻の年金加入状況と合わせて、日本年金機構で事前に確認しておくことが重要です。
私の妻は12歳年下で、契約社員としてフルタイムで働いています。私が65歳になるとき、妻はまだ50代前半。年齢差だけ見れば、加給年金を10年以上・総額で数百万円規模で受け取れる計算になります。
ところが、妻はフルタイムで長年働いており、自身の老齢厚生年金を十分に受給できる見込みのため、加給年金は支給されない(または停止される)可能性が高いのです。
「年齢差があるから有利」と思っていたのが、実は単純にそうとは言えなかった──これが我が家のリアルです。同じように年下の配偶者がいる方は、必ず配偶者の年金加入状況と合わせて確認してみてください。
なお、妻が65歳になって自身の年金受給が始まる際に、生年月日などの条件によっては「振替加算」が妻の年金に加算される場合があります。ただし振替加算は制度の見直し議論が続いており、将来的に変更される可能性があります。最新情報は日本年金機構等でご確認ください。
50代会社員のリアルな年金見通し(一次情報)
私(masahiro・52歳)は、金融・流通系のシステムを支えるインフラ保守・コールセンターの仕事で、社会人になってから30年以上、会社員として厚生年金に加入し続けています。
「ねんきんネット」で確認した私自身の年金見込額は、平均的な会社員の受給水準とおおむね同程度でした。長く働いてきたつもりでも、現役時代の年収と比べると落差は想像以上で、「年金だけで悠々自適」とはいかない現実を数字で突きつけられた思いです。
息子(2025年からNISAでオルカン積み立てを開始)の運用状況と合わせて考えると、「年金だけに頼らず、できるだけ早くからNISA・iDeCoで自助努力する」ことの重要性を、親子両方の視点から実感しています。
ぜひ「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、ご自身の見込額を確認してみてください。現実を知ることが対策の第一歩です。
今から始める3つの対策
「年金が少ない」とわかっても、今からでも備えることはできます。特に40〜50代の方に実践してほしい対策を3つ紹介します。
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1ねんきんネットで見込額を確認する
日本年金機構の「ねんきんネット」に登録すると、現時点での見込額や将来の受給額シミュレーションができます。まず「自分の年金は何万円か」を知ることがすべての出発点。マイナポータルからも連携可能です。 -
2NISAで長期・積立・分散投資を始める
年金だけでは足りない不足分を、NISAの運用益で補う戦略が有効です。50代からでも遅くはありません。全世界株式(オルカン)やS&P500インデックスファンドへの積み立ては、長期で見るとリスクを分散できます。 -
3固定費を見直し、老後収支をシミュレーションする
保険・通信費・光熱費などの固定費を現役中に削減し、毎月の収支を整えておくことが重要です。「老後に月いくら必要か」を計算し、年金との差額を貯蓄・運用で埋める計画を立てましょう。
年金の受給開始を65歳から70歳・75歳に遅らせる「繰下げ受給」を選ぶと、1ヶ月あたり0.7%増額されます(70歳まで繰下げで42%増、75歳まで繰下げで84%増)。健康状態・生活費・資産状況を総合的に判断したうえで、検討する価値があります。
まとめ
厚生年金(基礎年金を含む)の平均受給額は月14万円台後半で、手取りベースではさらに少なくなります。夫婦・単身どちらの世帯でも、年金だけで「ゆとりある生活」をまかなうのは難しいのが現実のデータが示す姿です。
- 厚生年金の平均受給月額は約14万円台後半(国民年金を含む合計)
- 手取りはここから税・社会保険料で1〜2万円ほど差し引かれる
- 65歳以上夫婦世帯は、手取りベースで収入と支出がほぼ拮抗(特別な支出で不足に転じやすい)
- 年収・加入期間によって受給額は大きく変わる
- 加給年金は年下の配偶者がいれば年間約40万円の上乗せだが、配偶者が自身の老齢厚生年金を十分に受給できる場合などは停止されることがある
- まずねんきんネットで自分の見込額を確認することが第一歩
- NISA・iDeCoで不足分を自助努力で補う計画を立てよう
【免責事項】本記事は情報提供を目的としており、個別の投資・税務・法律のアドバイスではありません。投資にはリスクが伴い、元本割れの可能性があります。個別の判断は専門家(FP・税理士・社会保険労務士等)にご相談ください。本記事の情報により生じた損害について、運営者は責任を負いかねます。
【出典】厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」/総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」(2026年2月公表)/国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」/日本年金機構 公式サイト
※ 記事内容は2026年6月時点の情報です。制度や数値は今後変更される可能性があります。