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本記事は、定年後の健康保険を比較した「任意継続 vs 国民健康保険」の“年金版”です。歳の差夫婦の社会保険を考えるなら、両方あわせてどうぞ。
目次
前回、定年後の健康保険(任意継続と国民健康保険)を比較しました。今回はその“年金版”です。
この記事の結論(先に言います)
早期リタイアで増える社会保険の負担は、「私の年金」ではなく「まだ60歳未満の妻の国民年金」でした。国民年金を払う義務は20歳以上60歳未満まで。私は60歳で払い終わりますが、12歳年下の妻は、私が会社員(厚生年金の加入者)でなくなった瞬間、自分で国民年金を払う立場に変わります。
歳の差12歳・妻が基本的に働く予定のない我が家を例に、妻がいくら・何年払うことになるのか、令和8年度(2026年度)の金額で試算してみます。同じように年の差があり、配偶者があまり働く予定のないご家庭の参考になればうれしいです。
1. 大前提:60歳を過ぎたら「自分の国民年金」は払い終わる
最初に、いちばん誤解しやすいところを。
国民年金の保険料を払う義務があるのは、原則20歳以上60歳未満の人だけです。つまり私が60歳になれば、自分の国民年金保険料の支払いは終わります。「無職になったら国民年金を払い続けるのでは?」と不安になりがちですが、60歳以降は原則として払いません。
例外は「任意加入」。過去に未納・免除期間があって老齢基礎年金が満額に届かない人が、60〜65歳の間に任意で加入して満額に近づける制度です。あくまで“増やしたい人が選ぶ”もので、義務ではありません。
参考(令和8年度)
国民年金保険料は月額17,920円。老齢基礎年金(満額)は月額70,608円。保険料は毎年改定され、令和9年度は月額18,290円が決まっています。
ここを押さえると、「私の年金」より先に考えるべきは別のところだと見えてきます。
2. 歳の差夫婦の落とし穴:私が会社員を辞めると、妻が「第1号」になる
我が家は夫婦で12歳差。妻は今フルタイムで働き、自分の勤務先で厚生年金(第2号被保険者)に入っています。問題は、妻が「基本的に働きたくない」と言っていることです。
年金の被保険者区分を整理します。
| 区分 | 対象 | 保険料 |
|---|---|---|
| 第1号 | 自営業・無職・学生など | 自分で国民年金を払う |
| 第2号 | 会社員・公務員 | 厚生年金(給与天引き、会社が半分負担) |
| 第3号 | 第2号に扶養される60歳未満の配偶者 | 保険料0円 |
妻が仕事を辞めたあと、妻の区分は「私(夫)の働き方」で決まります。
| 私(夫)の状態 | 妻の年金区分 | 妻の国民年金保険料 |
|---|---|---|
| 会社員として厚生年金に加入(第2号) | 第3号 | 0円 |
| 無職・自営・任意継続のみ(第2号でない) | 第1号 | 月17,920円(令和8年度)を自己負担 |
つまり、妻を「保険料0円」に保てるのは、私が会社員として厚生年金に加入し続けている場合だけ。私が早期リタイアした瞬間、妻は第1号になり、自分で国民年金を払い始めます。
3. 65歳の壁:私が働き続けても、妻はいずれ第1号になる
もうひとつ、歳の差夫婦が見落としやすいのが65歳の壁です。
第3号でいられるのは「第2号に扶養される60歳未満の配偶者」。この前提が崩れるタイミングが2つあります。
妻が第3号から外れる2つのタイミング
- 私が会社員をやめて第2号でなくなったとき
- 私が65歳になったとき(私が働いていても、妻は年金の扶養=第3号から外れます)
我が家の場合、私が65歳になると妻はまだ53歳。たとえ私が65歳まで働き続けても、そこから妻が60歳になるまでの約7年間は、妻自身が国民年金(第1号)を払うことになります。
つまり歳の差夫婦では、「妻が第1号として国民年金を払う期間」は、程度の差こそあれ避けにくい、というのが実情です。
4. 【試算】妻が第1号で払う国民年金は、総額いくら?
妻が第1号として払う“年数”が、そのまま家計の負担になります。私の働き方ごとに概算しました。
| 私の選択 | 妻が第1号で払う期間 | 妻の国民年金 概算総額(目安) |
|---|---|---|
| 60歳で完全リタイア(以後ずっと第2号でない) | 妻48〜60歳=約12年 | 約258万円 |
| 65歳まで会社員として勤務(厚生年金) | 妻53〜60歳=約7年 | 約151万円 |
ここから読み取れること
- 「60歳完全リタイア」と「65歳まで働く」の差は、妻の国民年金だけで約100万円超。ここに私の給与や厚生年金の増加も乗ります。
- 一方で、私が65歳になれば妻はどのみち第3号を外れるので、妻53〜60歳分(約151万円)は、私の働き方にかかわらず発生すると考えておくと、見通しが立てやすくなります。
5. 「払い損」ではない:第1号でも妻の老齢基礎年金は積み上がる
ここは誤解しないでほしいポイントです。第1号として払う国民年金は“払い損”ではありません。払った期間はそのまま妻の老齢基礎年金(満額:令和8年度で月70,608円)に積み上がります。
| 区分 | 保険料と年金の関係 |
|---|---|
| 第3号 | 保険料0円なのに、その期間も老齢基礎年金に反映される(いわば“タダで積み上がる”) |
| 第1号 | 自分で保険料を払い、その期間が老齢基礎年金に反映される |
つまり「早期リタイアの“コスト”」の正体は、第3号なら無料でついたはずの年金期間を、第1号として自腹で買い直すことになる点です。年金そのものが消えるわけではありません。
ちょっとした上乗せワザ:付加年金
第1号の人は「付加年金」(保険料に月400円を上乗せ)を使えます。受給時に「200円×納付月数」が毎年上乗せされるので、2年受け取れば元が取れる計算です。妻が第1号でいる期間があるなら、検討の価値があります。
6. いつ・いくら備える?我が家の方針
数字を並べてみて、我が家の方針はこう整理できました。
我が家の方針
妻の国民年金(年21.5万円超×数年)を“固定費”として家計計画に最初から組み込む
「妻を扶養に入れて0円」は、私が会社員(第2号)で働き続けている間だけ。しかも私が65歳になれば終わる。健康保険(任意継続 vs 国保)と年金(妻の第1号)は別々に判断が必要で、任意継続でも妻の国民年金はゼロにならない。
定年前にやることリスト
- ねんきんネットで、私と妻それぞれの加入記録・将来見込みを確認
- 妻が60歳になるまでの「第1号期間」の年数を数え、国民年金の総額を家計に計上
- 妻が第1号になる期間があるなら、付加年金の利用を検討
- 過去に未納・免除があれば、60歳以降の任意加入で増やす価値があるかを検討
- (収入が大きく下がる場合)国民年金の免除・納付猶予が使えるか、年金事務所で相談
まとめ
歳の差夫婦の定年準備で、私がいちばん見落としていたのは「自分の年金」ではなく「妻の国民年金」でした。国民年金を払う義務は60歳未満まで。私は60歳で払い終わりますが、12歳年下の妻は、私が会社員でなくなった瞬間、あるいは私が65歳になった時点で「第1号」となり、60歳まで自分で国民年金を払うことになります。
ただし、それは“払い損”ではなく、妻の老齢基礎年金に積み上がるお金です。早期リタイアを選ぶなら、この期間の国民年金を家計の固定費として最初から織り込んでおくと、退職後の見通しが立てやすくなります。
保険料や制度は年度によって変わります。最終的にはねんきんネットや年金事務所での確認が確実です。健康保険とあわせて早めに数字を押さえておけば、安心して60代を迎えられます。
出典
- 日本年金機構「国民年金の保険料はいくらですか。」(令和8年度 月額17,920円/令和9年度 月額18,290円)
- 日本年金機構「老齢基礎年金」「令和8年度の年金額」(満額 月70,608円)
- 日本年金機構「第1号・第2号・第3号被保険者」「付加保険料の納付」
- 厚生労働省・日本年金機構「国民年金の加入と保険料納付は20歳から60歳まで」