再雇用と年金 2026年改正後の繰上げ判断

再雇用で年金は繰上げるべき?2026年改正で「働くと年金が止まる」が消えた今の正解

結論:再雇用で給与があるなら、急いで年金を繰上げる動機は薄いです。2026年4月の改正で「働くと年金が止まる」心配はほぼ消えましたが、それは「繰上げてよい」という意味ではありません。残る判断軸は『繰上げの永久減額(最大24%・生涯)』。給与で生活が回る再雇用期間は、通常どおり65歳から受け取って永久減額を避けるのが基本線です。

定年後も同じ会社で再雇用され、給与を受け取りながら年金を早めにもらう——この「働きながら繰上げ」を考える50代は少なくありません。かつては「働くと年金が止まる(在職老齢年金)」が大きな足かせでしたが、2026年の改正でこの前提が大きく変わりました。順番に整理します。

在職老齢年金とは/2026年に基準額が65万円へ

在職老齢年金とは、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、給与と年金の合計が一定額を超えると年金の一部または全部が止まる仕組みです。再雇用は通常この厚生年金に加入するため、対象になります。

この「一定額」=支給停止調整額が、2026年4月から前年度の51万円→65万円へ大幅に引き上げられました。給与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額の合計が65万円を超えた分の半分が止まる、という計算です(老齢基礎年金は対象外で全額もらえます)。

【試算例:典型的な再雇用】

給与(総報酬月額相当額)25万円 + 老齢厚生年金の基本月額12万円 = 合計37万円

37万円 < 65万円 → 年金は全額支給(停止なし)

給与40万円+年金15万円の合計55万円でも、改正後の65万円基準なら全額支給。
(改正前の51万円基準なら、55万円-51万円=4万円の半分・2万円が止まっていました)

ポイント:多くの再雇用は、給与+年金が65万円に届きません。つまり「働くと年金が止まる」という従来の心配は、2026年改正でほぼ起きなくなったのです。

出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」、厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」

それでも繰上げを勧めない理由=永久減額

「止まらないなら繰上げてもいいのでは」と思うかもしれません。ですが、在職老齢年金で止まる・止まらないと、繰上げで減る・減らないは別の話です。

繰上げ受給を選ぶと、1か月あたり0.4%、60歳ちょうどなら最大24%、年金額が減ります(昭和37年4月2日以降生まれが対象)。しかもこの減額は一生続き、累計の受取額が65歳開始に追い抜かれる損益分岐点はおおむね80〜81歳です。

再雇用で給与が入っている期間は、生活費を給与でまかなえます。つまりわざわざ年金を前倒しして永久減額を背負う必然性が薄い。だからこそ、再雇用中は通常どおり65歳から受け取り、減額を避けるのが基本線になります。

出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」

高年齢雇用継続給付はもうあてにできない

再雇用で給与が下がったとき、これまで収入を補ってくれたのが「高年齢雇用継続給付」です。60歳時点より賃金が75%未満に下がった人に、賃金の一定割合を給付する制度でした。

ところがこの給付率は、2025年4月以降に新たに60歳になる人から15%→10%に縮小され、将来的には廃止される見込みです。これから60歳を迎える50代は基本的に10%の対象で、さらに先細りが見込まれます。

注意:「給与が下がっても高年齢雇用継続給付があるから大丈夫」という前提で生活設計を立てるのは危険です。あてにしすぎず、給与と年金だけで成り立つ計画を基本に置きましょう。
くわしくは 高年齢雇用継続給付は2030年に廃止予定 もどうぞ。

出典:厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」

ケース別の目安

あなたの状況年金の受け取り方の目安
再雇用の給与で生活が回る通常どおり65歳から受給。永久減額を避けられる(基本線)
給与だけでは生活が厳しい繰上げも選択肢。ただし永久減額(最大24%)と損益分岐点80〜81歳を理解したうえで
給与が高め(合計65万円超の見込み)在職老齢年金で一部停止の可能性。繰上げの実益はさらに小さい

働き方そのものを迷っている場合は 60歳からの選択肢マップ で、転職・バイト・完全リタイアとも比較できます。

よくある質問

Q. 再雇用で働くと年金は止まりますか?

2026年4月以降は、給与と老齢厚生年金の合計が月65万円を超えた場合にのみ、超えた分の半分が止まります。典型的な再雇用は65万円に届かないことが多く、原則として止まりません。老齢基礎年金は給与に関係なく全額受け取れます。

Q. 繰上げと再雇用は両立できますか?

できます。ただし在職老齢年金で止まらなくても、繰上げによる永久減額(最大24%・生涯)は別にかかります。給与で生活できる期間は、繰上げの必要性が低い点に注意してください。

Q. 高年齢雇用継続給付はまだもらえますか?

制度自体は残っていますが、2025年4月以降に60歳になる人は給付率が10%に縮小され、将来廃止が見込まれています。収入計画の前提にしすぎないほうが安全です。

まとめ

2026年の改正で、再雇用の「働くと年金が止まる」という不安は実質的に小さくなりました。一方で繰上げの永久減額は変わらず残ります。再雇用で給与がある間は通常どおり65歳から受け取り、永久減額を避ける——これが多くの人にとっての基本線です。給与だけでは厳しい場合に限り、減額と損益分岐点を理解したうえで繰上げを検討しましょう。

本記事は2026年6月時点の制度にもとづく情報提供です。在職老齢年金・繰上げ受給の取り扱いは個人の状況により異なります。具体的な受給額や判断は年金事務所でご確認ください。