60歳で転職、年金は繰上げる?「給与を自分で選べる」転職組の年金戦略
定年を機に同じ会社に残るのではなく、別の会社へすぐ移る——この「転職組」は、再雇用組とは少し違う条件で年金を考えられます。鍵は「自由度」と「高年齢雇用継続給付の落とし穴」です。
転職組の在職老齢年金は、ほぼ気にしなくていい
転職先で厚生年金に加入して働く場合も、再雇用と同じく「在職老齢年金」の対象です。これは給与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額の合計が一定額を超えると、超えた分の半分の年金が止まる仕組みです。
その基準額は2026年4月から51万円→65万円へ引き上げられました。転職後の給与と年金の合計が65万円を超えるケースは多くないため、転職組も停止はほとんど気にしなくてよくなったのが現状です(老齢基礎年金は給与に関係なく全額)。
出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」、厚生労働省
判断軸は「繰上げの永久減額」
在職老齢年金で止まらなくても、繰上げによる減額は別にかかります。1か月あたり0.4%、60歳ちょうどなら最大24%減で、これは生涯続きます(昭和37年4月2日以降生まれが対象)。累計受取額が65歳開始に追い抜かれる損益分岐点はおおむね80〜81歳です。
転職して安定した収入を確保できるなら、年金を急いで前倒しする理由は乏しく、通常受給で永久減額を避けるのが合理的。逆に、転職で収入が下がる・不安定になる場合は、繰上げ年金を生活費の土台に据えるという設計もありえます。「収入を自分で選べる」ことは、年金戦略を自分で選べることでもある——ここが転職組の強みです。
出典:日本年金機構「年金の繰上げ受給」
②の落とし穴:転職だと高年齢雇用継続給付が使えないことがある
見落とされがちなのが、高年齢雇用継続給付の扱いです。これは60歳時点の賃金と比べて75%未満に下がった状態で働く人に給付されるもので、雇用保険の被保険者期間が通算5年以上あることなどが要件です。
転職先がすぐ決まらず、いったん離職期間を置く場合は、失業給付の活用も視野に入ります。詳しくは ③失業給付と年金の関係 をどうぞ。
出典:厚生労働省「高年齢雇用継続給付」
ケース別の目安
| 転職の状況 | 年金の受け取り方の目安 |
|---|---|
| 収入を維持・確保できる転職 | 通常どおり65歳から受給。永久減額を避ける(基本線) |
| 収入が下がる/不安定な転職 | 繰上げを生活費の土台に組む選択肢も。減額と損益分岐点を理解したうえで |
| すぐに次が決まらない | 失業給付の活用を検討(③へ)。ただし繰上げ年金とは同時受給できない点に注意 |
よくある質問
Q. 転職しても在職老齢年金で年金は減りますか?
2026年4月以降は、給与と老齢厚生年金の合計が月65万円を超えた場合にのみ、超えた分の半分が止まります。多くの転職では届かないため、原則として減りません。
Q. 転職だと高年齢雇用継続給付はもらえませんか?
被保険者期間や賃金の比較基準などの要件次第です。転職で条件が変わり受けられなくなることもあるため、事前にハローワークで確認してください。なお給付率は10%に縮小され、将来廃止も見込まれています。
Q. 再雇用と転職、年金の考え方はどう違いますか?
在職老齢年金の仕組みは同じですが、転職は給与水準を自分で選べるぶん、年金の受け取り方も主体的に設計できます。働き方全体の比較は 60歳からの選択肢マップ をご覧ください。
まとめ
転職組は、在職老齢年金(65万円基準)をほぼ気にせず、給与水準を自分で選べる強みがあります。収入を確保できるなら通常受給で永久減額を避け、収入が下がるなら繰上げを土台にする——給与の選び方と年金の受け取り方をセットで設計するのが転職組の年金戦略です。高年齢雇用継続給付をあてにしすぎないことも忘れずに。
本記事は2026年6月時点の制度にもとづく情報提供です。在職老齢年金・高年齢雇用継続給付・繰上げ受給の取り扱いは個人の状況により異なります。具体的な可否や金額は年金事務所・ハローワークでご確認ください。